[#KeepgoingTOGETHER] Vol. 46 / 神楽坂セッションハウス「セッションオンライン劇場」

伊藤 孝|神楽坂セッションハウス
プロデューサー

オンライン配信で得た成果と課題

今回のコロナ禍という未曽有の事態によって、多くの観客を対象にした劇場でのダンス公演を控えなければならなくなったため、ダンスと観客の密接な関係を維持するべく始めたのが「オンライン劇場」であった。しかし、ダンスを見せるだけでなく、パソコンのチャット機能をフルに活用して、ダンサーとフォロワーとの意見交換の時間を設けたことから、出演者と観客の間に新たな関係性が生まれてきたことは、大きな発見であった。劇場でのライブ公演が可能になった時にも、オンラインによる公演の発信も、新たな表現方法の一つとして位置付けていくことも検討課題として考えている。
 また、配信後2週間「アーカイブ」として、セッションハウスのHP上で公演映像を見ることを可能にしたことから、視聴者の数が大きく伸びることが判明し、ダンスへの関心度を高める効果があったと思われる。

©神楽坂セッションハウス

オンライン配信準備に要した時間、人数、環境

1991年の創設以来ダンスのライブ公演を主軸にして実施してきたセッションハウスであるが、今回は未知の「オンライン劇場」の可能性を探るために、2週間ほどの検討時間を要した。配信準備には多くの人数は避けることが求められる状況下で、テクニカル・スタッフ2人で延べ3日間ほどの時間を要したが、地下劇場であることからネット配信のためのケーブル設置などに苦心した。また回数を重ねるにしたがって、機材を補填して充実化を図り、発信映像の質的向上が可能となった。
 配信に際しては更に照明担当の1名と司会役のダンサー1名が加わり、合わせ4名のスタッフで実施した。

©神楽坂セッションハウス

オンライン配信準備で苦労した点・工夫した点 、今後の活動におけるオンライン配信の活用や展開について

普段のライブ公演では、小劇場ならではの舞台と客席がインティミットな関係を作ることが出来るのだが、オンライン劇場は演ずる人と見る人とが相対しない一方的な映像発信のため、カメラやマイク、モニターを複数台購入またはレンタルして設置するなどダンスを立体的に伝えることに苦心しての配信となった。
 その結果、ダンサーの体の動きをクローズアップなどで鮮明に伝えることや、映像のダブル・フォーカスなどでダンスの面白さを伝えることが出来るオンラインの方法は、今後の活動に積極的に取り入れていってよいものと考える。
 また、オンライン機能を設置に要する経費の捻出が問題であったが、初の試みであったことから無料配信とし、「投げ銭」方式でカンパを募るなどで対処した。EU・ジャパンフェスト日本委員会からの支援が大きな支えになったことも明記しておきたい。
 さらに既に海外でも活躍しているダンサーとともに、海外との交流を望む若手ダンサーも多数参加したことから、今後オンライン機能を生かしてヨーロッパ諸国など海外に日本のダンス情報を伝えていくことが期待される。

 

<プログラム>

神楽坂セッションハウス「セッションオンライン劇場」

  • 実施日:2020年5月16日~6月27日 毎週土曜日
  • 内容:ソロ・ダンスを軸に14名のダンサー、アーティストが参加
  • 告知方法、使用した広報ツール:Facebook, Twitter
  • 使用した配信ツール:YouTube
  • 視聴者の反応を得るために工夫した点:
    ハッシュタグ#セッションオンライン劇場の使用、チャット機能の使用
  • 視聴回数
    リアルタイム視聴者数:1,169人
    アーカイブを含む総視聴回数:14,684回(2020年6月30日現在)