[#KeepgoingTOGETHER] Vol. 55 MMFS(ミクロ・メディア・フェスティバル Seeds)2020

四方 幸子|多摩美術大学客員教授/東京造形大学客員教授/キュレーター

1. オンライン配信を実施しての所感

オンライン上のフェスティバルとライブの実験的な追求を試みるワンナイト・フェスティバル「MMFS2020」(トーク&ライブ)だが、コロナ禍で3ヶ月間無観客配信を続けていたDOMMUNE(共同開催者)が、この日からのスタジオへの観客入れを開催数日前に決定した。「オンラインのみを前提としたフェスティバルが、実空間に延長する」という前例のない展開となり、その相乗効果も念頭に開催した。リモート・ライブを間にはさんだトークでは、リアルタイムでの体験の衝撃とともに、その意味について活発な意見が交わされた。後半のライブでは、複数のリモート空間と実空間に加え、バーチャル空間にリモート空間が侵入したり、スマートホン上の体験を並行させたライブなど、画期的な試みが次々と提示され、Twitterを中心に大きな反響を呼んだ。

 

2. オンライン配信で得た成果と課題

ライブ用照明の電気容量が原因で、イベント開始時に複数回起きたスタジオ停電(配信には無影響)が現場を沸かせた。山手線車内でマスク下に忍ばせたマイクでライブを行い、渋谷駅からスタジオに向かう途中もライブを継続、スタジオ(渋谷パルコ9F)に到着した山川冬樹は現場を騒然とさせた。彼がそのまま加わったトークでは、オンラインと実空間の接続や公共空間での新たなライブの可能性が活発に議論された。現場しか共有できない強烈な体験とともに、今回確認できたのが、体験のレベルが異なるものの「実空間とオンライン双方で共有されたリアルタイム性の生々しさ」である。

 

3. 今後のご活動におけるオンライン配信の活用や展開について

今回行った、スタジオとともに、複数の空間をオンラインでつないだトークとライブの試みは、現場、リモート、バーチャル、スマホなど異なる「空間」やメディアを連結するオンライン・ライブの実験場となった。山川冬樹の山手線シークレットライブ配信~スタジオ出現は、公共空間での移動、電車内で気づかれないままオンラインで広く共有されるという前代未聞の状況を創出した。正直のライブは、各自のいる2つの空間をシームレスに連結した「ステージ」をデフォルトに、サイバー空間やスマホなど複数の様態を同時並行で展開した。ライブを食い入るように見守る人々の間に、スタジオとオンラインを超えて共有されたのが「リアルタイム性」であった。この体験をもとに、アーカイブでは感じにくい、まさに起きているリアルタイムの生々しさを表出させる側面を、今後のイベントでは追求していきたい。

 

<プログラム>

MMFS2020 x DOMMUNE presents
IST2010から10年 🧡 DOMMUNE 10周年
MMFS (ミクロ・メディア・フェスティバル Seeds) 2020

●実施日: 2020年6月26日 19-24時

●内容: ポストパンデミックの時代においてオンラインのフェスやライブの可能性を追求するワンナイト・フェスティバル@ DOMMUNE.COM

「ポストパンデミックの時代」において、あらゆる領域で実空間とヴァーチャル空間の新たな関係が模索されています。複数の空間が結ばれ、グローバル/ローカル、日常/公共がこれまでにない形で浸透する、動的なインタラクションと創造の場が生まれつつあるのです。「MMF Seeds 2020」はそのような時代にいち早く、訪れつつある新たなフェスの可能性を検討し、ライブで実験的実践を試みる、「種(Seeds)」としてのワンナイト・オンラインフェスティバルです。トーク 1は、南イタリアのInterferenze(2003-)ディレクター/Liminaria(2014-)キュレーターのレアンドロ・ピサノによる、活動の展開と未来のビジョンを皮切りに、ちょうど10年前のこの日レアンドロを迎えて開催されたInterfererenze東京版「Interferenze Seeds Tokyo (IST)2010」の出演者であるevalaと城一裕が加わり、ここ10年のフェスや表現の拡張そして展望を語ってもらいます。トーク 2では、DOMMUNE10年を迎え、「SUPER DOMMUNE」として技術を駆使し表現の可能性を挑発し続ける宇川直宏と、自ら起点とする身体性を社会・政治的な<身体>へと延長し、思考・表現するアーティスト山川冬樹を迎え、ポストパンデミック時代におけるフェスや表現の極北を掘り下げます。ライブは、山川冬樹、ラヂオ ensembles アイーダ、evala、そして新鋭のAi.stepと正直のラインナップで、オンラインの可能性をコンセプト x 空間 x 技術面で容赦なく探求する新たな息吹がスパークします!

19:00-20: 15 Talk 1: 「ミクロ・フェスの発動と展開~Interferenze, Liminaria、IST2010そして未来」
  出演: レアンドロ・ピサノ(Interferenze、Liminaria)、evala、城一裕
  モデレーター:四方幸子(MMFS2020)

20:15-20:35 Live 1:山川冬樹

20:35-22:05 Talk2:「脱皮するフェス:ポストパンデミック時代の可能性」
  出演:山川冬樹、evala、宇川直宏(DOMMUNE)  
  モデレーター:四方幸子(MMFS2020)

22:05-24:00 Live 2: Ai.step、正直、ラヂオ Ensembles アイーダ、evala

[参考]「 Interferenze Seeds Tokyo (IST) 2010」アーカイブ(http://www.interferenze.org/archive/2010/ist2010.jp/

●告知方法、使用した広報ツール:
Facebook, Twitter (Yukiko Shikata), Twitter (Naohiro Ukawa / DOMMUNE), Website: DOMMUNE.COM / Twitter & Facebook of participating speakers and artists (Japan, Italy)

●使用した配信ツール:
[Streaming] DOMMUNE.COM, YouTube Super Chat, Zoom
[Live by artists] TwiCast(Fuyuki Yamakawa), YouTube Live (Ai.step), mozilla hubs, Twitch, https://shojiki.club/KB2nd/(Shojiki)

●視聴者の反応を得るために工夫した点:
ハッシュタグ、 DOMMUNE.COM上のチャット、 YouTube Super Chat, 現場からのリツイート(DOMMUNE.COM、各アーティストや出演者)

●視聴者数(総合計):14,549 ビューワー