[#KeepgoingTOGETHER] Vol.48 ARICA『KIOSK』

藤田康城|シアターカンパニー アリカ 演出

1.オンライン配信を実施しての所感

私たちはフィジカル・シアターとして、観客と共有する時間と空間に実在するパフォーマーの身体が、観客に与える力の直接性が最も重要だと考えている。それをオンラインで伝えることは不可能だろう。

 しかし、この状況下、オンラインによって、世界中の伝説的な舞台作品を映像として見ることができたことで、舞台と映像の関係について考えさせられている。   

 それらの舞台記録映像からは、身体の直接性は削がれても、優れた作品の美点を、はっきりと見てとることができた。記録映像がもたらす距離感によって、作品の構造が明快になったとも思えた。本来一回性の舞台表現を、新たに発展的に考察することができる可能性もあると感じた。

 映像の構成には熟慮すべきだが、舞台作品の配信による紹介の意義を真摯に考える機会なのかもしれない。

 

 

 

 

2.オンライン配信準備に要した時間、人数、環境

カンパニーのアーカイブのために、それぞれの舞台は映像として記録をしている。国内外でのツアーを成立させるには、それらの資料は必須である。

 今回は、プロデューサー及び出演者らと討議を重ねて、最近の上演でありARICAの代表作の一つである作品の配信をすることになった。記録映像は撮影をしていたが、時間の制約と用途が明確なオンライン配信のために、改めて映像の編集をした。

 今回の記録映像を撮影し、また2019年には共同に作品も創作した映像作家、越田乃梨子が編集をおこなった。関わった人数は6人。今回の配信のためには、2週間程度。

 

 

3.今後のご活動におけるオンライン配信の活用や展開について

観客と共有する時間と空間なくしては、私たちの舞台は成立しないとの思いは変わらない。多くの舞台人も同じ心情であろう。しかし、ARICAは、身体行為を中心としながら、言葉、音、視覚表現をも同等に重視してきた。オンライン発信に於いては、伝わらない身体の直接性に替わって、言葉、音、ヴィジュアルに比重を移しつつ、オンライン独自の伝達が可能なのではないかと考え始めている。

 もちろん、20世紀の多くの先達たちも、舞台と映像の相互の表現について実践をしてきている。それらを参照しつつ、ARICAらしい配信の展開を考えていきたいと思う。

 

<プログラム>

KIOSK

  • 実施日:2020年2月9日~11日
  • 内容:自身の身体をゴムロープに結びつけ、その伸縮を利用して、ペットボトルの水と新聞を陳列する奇妙な「KIOSK」の女店員の話。そのゴムロープは女の過去のロープダンサーとしての記憶につながる。
    2006年の初演以来、アップデートを繰り返しながら、長年世界をツアーしてきた、ARICAの代表作。
  • 告知方法、使用した広報ツール:Facebook
  • 使用した配信ツール:YouTube
  • 視聴者の反応を得るために工夫した点:公式FBでの告知をキャスト・スタッフがシェアでの拡散
  • 視聴者数(総合計):107(6/5正午現在)