北ノルウェーでの日本映画の日

ベネディクテ・シュイテマ|フラム・キノ セールス&マーケティングマネジャー

私はこの映画祭を通してコワタンダ・フィルムズの才能ある人々と一緒に働く機会を得たことを大変嬉しく思っています。東京滞在中に、茂木美那氏とアンシュル・チョウハン氏にお会いすることが出来ました。渡航前、美那さんは親切に事前に東京の情報を共有してくださり、また滞在中は東京でのガイドとなってくださいました。彼女のお陰で私の東京滞在は大変価値あるものになりました。彼女のサポートに心から感謝しています。美那さんがいなければ、私の東京滞在はこのように素晴らしいものにはなりませんでした。東京の美しさ、文化、そして、とりわけその人々に非常に魅了されました。これまでの人生で多くの土地を訪れる機会がありましたが、日本の方々ほど素敵な人々に出会ったことはありません。今でも美那さんとは連絡を取り合い、折に触れ、お互いの文化の類似点や違いを共有しています。私はこの先もずっと、日本とその美しさに魅了され続けるでしょう。ぜひ東京を再訪したいと思っています。次に訪れる際には、日本の素晴らしい大使である美那さんとより多くの時間を過ごしたいと思います。東京は本当に特別な場所です。そして、地元の人の案内がなければすぐに迷い込んでしまうでしょう。今や私の心はすっかり東京に夢中になってしまいました。東京の美しさを決して忘れることはありません。

東京滞在を経て開催する企画は、コワタンダ・フィルムズへ捧げるものにしなければなりませんでした。幸運にも彼らの映画作品のうち数作品を鑑賞させていただき、その中の一作品、『コントラ』を中心として企画を構成することにしました。この作品はイベントの主役となるものでしたが、集客数は最も少ないものでした。しかし、これは私が予想していた通りのことで、ノルウェーの観客にとって、全く未知の白黒の日本映画を2時間観るように説得するのは難しいことです。しかし、人々の習慣を変えるためにはどこかで始めなければならず、作品に触れる機会を持ってもらう必要があります。ですから、私はとにかく実行に移しました。街の人々に、この素晴らしい映画を鑑賞する機会を持ってほしかったのです。私のイベント開催の目標は、一般的な映画館の観客の視野を広げ、彼らの習慣に挑戦することでした。本企画は既存のオーディエンスと新しいオーディエンス両方を引き寄せることが出来、私自身、非常に満足しています。

Videogreeting from main actor © Kowatanda Films

私たちは、通り向かいの日本料理店に協力していただき、参加者一人ひとりにささやかな日本食を振る舞いました。これがイベントに素晴らしい彩りを添えました。また、来場者の方々に無料でポップコーン、ソフトドリンク、また小さなお土産もお配りしました。この日、映画館にはとても良い雰囲気が漂い、参加者たちはとても満足されていました。

全ての上映作品が短い挨拶と共に始まり、これから始まる作品の概要や今後の企画についてお伝えしました。『コントラ』の上映前には、映画に登場する主要キャラクターのお二人から特別ビデオメッセージがあり、とても素晴らしかったです。とりわけ、この映画館での本作品上映がノルウェー国内初、唯一であることをアピールしたので、来場者の方たちにとってはより一層特別でユニークな体験となったことでしょう。

さらに、特別な出来事がありました。観客席の中に、『コントラ』に関わったノルウェー人男性のご家族がいらっしゃったのです。私たちはそのことを事前に知りませんでした。分かった瞬間、世の中がとても小さく感じられる、何とも特別な出来事でした。男性はボードーの出身。現在、東京在住で映画業界に従事されているそうです。多くの意味で特別な出来事でしたが、何よりも、映画祭に来て下さった男性のご両親、ご兄弟にとって、男性の作品を映画館で鑑賞するのが初めてだったということは特別の意味がありました。これらの作品は通常ノルウェーで配給されないのです。幸運にも、彼らの方から私に近づいてこの話をしてくださいました。そこで、作品紹介をする際に、ステージからご家族の紹介もさせていただきました。この日はとても特別な1日となりました。ご家族にとって素晴らしい機会となり、また周りの観客の方たちにとってもその体験に深みを加えることが出来たと思います。

来場者の皆さまに、一味違う映画祭を提供できたことを嬉しく思います。上映作品のセレクションは素晴らしく、子どもから大人まで、また、アニメファン、そして映画の世界の素晴らしい体験を求める人々など、あらゆる年齢層に考慮されていました。

Proud family-members of a norwegian participant in the movie © Fram Kino

東京に滞在している間、美那さんやアンシュルさんと一緒にさまざまな映画館を探索する機会がありました。街のバリエーションを感じるため、小さなアートハウス映画館から大きな映画館まで訪れました。映画業界で15年以上働いてきた私にとって、世界中の映画館を体験することは素晴らしい経験でした。また、映画館のマネージャーとのミーティングの場もいくつか持ち、週毎の作品スケジュールの予約から上映プログラムの組み立てなで、東京の映画館の運営方法について多くのことを学びました。映画館で映画を鑑賞するという体験について、地球の反対側にある東京で素晴らしい視点を得ることが出来ました。類似点や相違点について多くの興味深い観察となりました。

観客からの興奮と関心は、この街でこれらの作品が受け入れられるポテンシャルがあることを気づかせてくれました。日本のアニメは世界中にファンを持っていますが、あまり知られていない独立系映画には未開拓の多くの可能性があります。将来的には、日本映画をテーマにした小規模なイベントを開催することを目指すことも視野に入れています。日本の映画業界での新しいネットワークを活用して、今回のように日本のアニメからアクション、質の高い映画まで幅広いジャンルの映画を集めたイベントを企画したいと思っています。映画館での上映作品の幅を広げることを楽しみにしています。