違いとともに舞う

ジョン・アシュフォード|エアロウェーヴ創設者

ロックダウン中は、よくズーム会議を行いました。

エアロウェーヴは、2020年4月、毎年恒例のライブダンスの祭典スプリング・フォワードをいち早くズームに切り替え、私達は国際カンファレンス出席のため画面の前に座ることにもすぐに慣れました。各自部屋に閉じ籠りながらも、この機会が無ければ出会うことのなかった世界各地の他の人々と会談し、この機会を最大限に活かしました。

突然ふと気が付くと、アーティスト、プロデューサー、興行主催者、助成団体が、同じ仮想空間で声を揃えていました。パンデミック後、どうしたら違うやり方で進められるのか?少数のプロジェクトにより有効に資金を投じる、公演をより長く巡回させる、滞在制作のために現地に留まれるよう巡回公演のペースを遅くする、飛行機に乗る頻度を減らす、など。

パンデミックにより、エアロウェーヴ・エクスチェンジは2年間延期となりました。しかし本プログラムは、誰もが待ち望んでいた優良な実践の模範的かつ直接的な事例として浮上したのです。 

Ayano Yokoyama with Greek host Frosso Trousa©︎Ayano Yokoyama

エアロウェーヴのジョン・アシュフォードは、本エクスチェンジに参加する日本人振付家として、横山彰乃氏を既に選出していました。ロックダウン直前に、横浜ダンスコレクションで受賞作となった同氏のソロライブを鑑賞していたのです。城崎国際アートセンター(以下、KIAC)の吉田雄一郎氏と赤レンガ倉庫の小野晋司氏は、エアロウェーヴの全出演アーティストをオンラインで視聴し、ヤンナ・ヤロネン氏と共演者を招聘することに合意しました。2022年4月、渡航状況がようやく整い、彰乃氏はアテネに飛び、エアロウェーヴのパートナーでスプリング・フォワードのプロデューサー、フロッソ・トゥルーサ氏のスタジオで2週間過ごしました。続いて欧州文化首都のエレフシナで開催されたスプリング・フォワードのオープニングで、地元の観客に加え、欧州内外各地の200名のゲストプロデューサーや興行主催者に向けて『水溶媒音』を披露しました。ヤンナが日本を訪問できたのは秋になってからで、まずKIACでの2週間の滞在制作活動で新作のリサーチを行った後、赤レンガ倉庫で横浜ダンスコレクション会期中に『BEAT ‘I just wish to feel you’』を2回公演しました。

Ayano in the Athens studio©︎Ayano Yokoyama

こうした活動は、ロックダウン下では、まさに夢のような機会でした。片道の大陸間フライトと3週間の滞在。短期間の巡回公演での邂逅で得るよりはるかに深い文化的差異の知識を獲得するチャンス。見知らぬ環境で新たな振付の発想を試みる機会。眩いプロの照明のもとで作品を披露する好機。しかしそれはアーティストにプラスに働いたのでしょうか?

彰乃氏の感想です。

「私はアテネで素晴らしい時間を過ごしました。日本で広く知られる典型的な欧州の都市とは大変異なり、自分が抱いていたギリシャのイメージとはかけ離れていました。多数の史跡や、至るところに落書きが見られ、またたくさんの教会がありました。ギリシャ神話は、日本のアミニズムや神道と多少似ています。運良くイースター中に滞在していたので、イースターのご馳走やお祭りが体験できました。私は日本のアニミズムに関心があるので、それらの類似点や差異が感じられる貴重な機会となりました。

続いてヤンナ氏から。

「KIACでの滞在制作中、望める限りの最高のおもてなしを経験しました。私達は様々なイベントに出席し、芸術分野内外の地元の方々と出会いました。幸運にも、僧侶の指導のもとで座禅や茶道に参加できました。彼は、私のボスですと言い妻を紹介し、自分はお酒に愛されすぎていると語り、その後自分のデニム調の僧衣について冗談を言いました。私達が、僧侶という職業柄、神聖で厳粛な有力者に違いないと思っていた人物が、日常のなかでユーモアを大事にし、使っていることを知りました。

再び彰乃氏から。

「街の人々が話しかけてくれて、地元の文化を経験する機会を得たことを幸運に思います。ふとしたことからギリシャの民族舞踊クラブにも参加し、移民の店員さんから話を聞きました。都市と建築、食べ物、気候を経験することを通じて、そこで暮らす外国出身者の生活に少し触れることができました。異なる文化、宗教、人種について知ることは、非常に大切なことです。日本や単発公演の際の短い滞在では、なかなか経験できないことです。しかしアテネに3週間滞在し、自分のパフォーマンスのリハーサルも並行して行えたことから、それが新たな発見に繋がりました。

Jenna and dancer Polett dressed by a former geisha (with Bush, dramaturg)©︎Jenna Jalonen

ヤンナ氏は、ユーモアを主題にリサーチした一方で、地元の民族舞踊を体験しました。

「この舞台は、日本様式の歌、衣装、振付が織り成す30を超える短い伝統舞踊を集めたものでした。この経験が、後に私達の創作プロセスでの多大なインスピレーションとなり、その形式と『伝統の守護』の要素を取り入れ、恐竜のバルーン着ぐるみを纏ったポレット氏が演じました。」ところがそこで彼女は、不可解な文化的差異にも遭遇しました。「場面の進行中、観客のあいだで全くあるいは殆ど反応や笑いがなかったのですが、終演後にどのくらい可笑しく感じたかアンケートを取ったところ、大半が『可笑しかった』または『非常に可笑しかった』との回答でした。このことが、何かしらのかたちで日本の人々が他者に対して抱く社会意識や配慮の大切さを教えてくれたのです。」

彰乃氏もまた、遭遇を通じて発見を得ました。

「アテネでの経験とスプリング・フォワードでの他国のアーティスト達との交流を通じて、自分の国やルーツを再考する機会を得ました。劇場間を歩いて移動する際に出会ったダンサーとの会話で、私のパートナーは男性か女性かと訊かれました。このような性別に関する話題は、日本で経験することはそれほどありません。欧州では、誰かを呼称する際、「彼女」か「彼」のどちらを使うかが会話に上ることが一般的になりつつあり、パートナーが異性であるという思い込みはもはや当然ではありません。私は、こうした現在の傾向を知ることができたことを嬉しく思いました。」

双方のアーティストが、自らの経験に加え、新しい異なる観客の認識を相手に自分達の作品を試すことの恩恵について幅広く報告しています。これは大いに学ぶことができるベストプラクティスの先見的な好例であり、これが2025年の第二弾の交流で活かされるよう願っています。彰乃氏の言葉で締めくくりましょう。

「今回の経験が、私の視野を広げ、ダンスの世界への理解をより深めてくれました。」