庭園、交差点、ウォーキングポエム…そして、永遠へ向かう果てしない小道

ぺトラ・カプス|サウンド・アーティスト

「…私の経験では、東京の交差点は、伝統的な日本庭園の中で見てきたような回遊小道によく似ている。 日本庭園を回遊する小道は、庭園内から街の景観を通してよく考えてデザインされている。人々はデジタルの世界に浸っているが、同時に、 個人と接触して認識することなく、距離を保って動いている人の群れの広がりの中にいる。庭園における孤独は明らかなことである。 一方、スクランブル交差点ではそうではない。個人と群衆の間のエネルギーはかなり強烈で流動的である。 赤信号と青信号の配列は、人生の、つまり、歩くことと立ち止まることの振付を構成している。動き、声、言葉は、騒音の時間と静寂の時間を混ぜ込んでいる…。」
(著者のウォーキングノート 2013年11月12日 22:31 東京 からの断章)

東京への短いインスパイアプロジェクトの旅の間に、私は伝統的な庭園やスクランブル交差点、両方の響きの表情に最も感銘を受けた。 私にとって渋谷にあるような交差点は、それぞれが自分の無限の道を歩む回遊小道のある現代の庭園のようなものであった。 私の作品『永遠へ向かう果てしない小道』(2013年11月18日 18:51 12″ サウンドウォーク断章: http://aporee.org/maps/work/?loc=20754)を上演したのもここであった。 歩いている時、人々は常にこの小道に沿って動線を描く。光と音の信号によって決められるリズムは、コントロールされた静止に似ている。 循環する動きの原則はこれらの交差点で使われている。ちょうど庭園で使われているように。歩くことによって無限のシンボルマーク(∞)を描く『無限の歩行』をすることは実際に可能なのである。

v63_01

2013年11月7日から20日の間に、私は手短に以下の庭園を訪れた。:
清澄庭園、六義園、小石川後楽園、浜離宮恩賜庭園、報国寺の竹林の庭(鎌倉)、旧芝離宮恩賜庭園、新宿御苑
<私の野外録音の音の断章少しとポエトリーの響き>
ミニチュアの滝、マイク、カラスの詩:
http://aporee.org/maps/?loc=20552&m=hybrid
庭園の響き、旧芝離宮恩賜庭園:
http://aporee.org/maps/work/?loc=20931
鎌倉の海の上に昇る満月:
http://aporee.org/maps/work/?loc=20786.
これらの庭園は、庭園の響きのために絶え間なく人工的な背景を創りだしている超高層ビルと、他の周囲を囲む高い建物の特徴的な都市景観によって包み込まれている。 ここでは豊かなこだまの女神が存在する。女神の音楽的才能のあるとどろきは決してやむことがない。その空間的、視覚的、触覚的、またはその他の知覚による特徴を考えると、 庭園は特定の、また束の間のセンシティブな音の領域を表している。音の領域の構成における興味は変化していて、その意図された使用や、その実際の、また潜在的な影響も変化している。 私はこの点について、もっと掘り下げたところでリサーチしたいと思っている。

ポエトリーソナー、クロノスペーシャルポエム(時空間の詩)は、私が自然のある地域、また都会を歩くことに関連して行っているものである。
ポエムへの小道、クロノスペーシャルポエムの記録:
http://aporee.org/maps/work/projects.php?project=pathsforpoems.
私はまたサウンドレコーディングを、環境の音の領域に浸して、自分の言葉の流れを記録する為の手段としても使用している。私のポエムは書くことによってではなく、 個人的な枠のなかと外を行き来する流れ、歩いて、立ち止まって、発話することによって創られる。クロノスペーシャルポエムは展開した瞬間のコピーをつかもうとするだけでなく、 拡張した時間の枠組みを分離させようとしている。それは周囲の個人的ではなくなった時間に直面した、個人的な時間から分離させようとしている。

庭園は現在のところ私の作品のうちの多くの中心になってきている。響き、体の動き、歩行、といったことは、私の興味の中心となってきている。 私にとって、歩くことは瞑想の実行であり、理性的な思考を空にして、詩の言葉に身をゆだねるための方法である。私の住むマリボルでは、市民公園の一部は『日本式庭園』と呼ばれている。 それはカエデの木、小さな池、小川、そして小道のまわりにデザインされている。私のソニックポエトリーの重要な部分が作られたのはここである。
たとえばウォーキングポエム 2013年3月31日 18:47, 3’10”, ソノポエティックの小道、マリボル:http://aporee.org/maps/?loc=17412&m=hybrid といった作品である。

v63_02

東京滞在中、私はウォーキングポエムの特別版を考えだした。『彼女のウォーキングポエム:マリボルと東京を折り重ねて』 (http://aporee.org/maps/test/edit/mfm/?id=145) という題目の携帯電話向けのオーディオミニチュアである。それはマリボルの日本式庭園の場所で発信し録音されたポエムの断章から構成されている。 この作品のために私は音の素材をマリボルから渋谷のスクランブル交差点に移動させた。携帯電話をラジオ受信機に変換すると、 (詳細についてはUdo Noll氏によるRadio Aporee,”携帯電話のためのradio aporeミニチュアご参照: http://aporee.org/mfm/)。 自分のウォーキングの振付を実行しながらポエムを聞き、ポエムの間を散策することができる。私はマリボルの日本式庭園の場所で他のミニチュアを準備した。 そこで私は東京の庭園と交差点からの音の素材とあわせて、もとの場所でポエトリーの音を拡張した: http://aporee.org/mfm/tracker.php?id=120 。 人は声や音、または録音されたものを聞きながら、明確な現実の霊妙さのなかを進む。声は仲介手段の入り口のようなものである。それらを通って動きながら、 声は時間と空間によって凝縮されるだけでなく、体を伝わることの無重力によってもまた動かされる。

澄んだ美しさと感激させるような響きを楽しみながら、いくつかの伝統的な庭園の美的価値を経験したあとで、 私は自然のまた文化的な景観とその音の領域についてのリサーチワークをさらに進めるための可能性とサポートを見出したいと望んでいる。 ポエトリーの響きで、また、具体性と目に見えるものの背後にある哲学と美学を研究で、東京と京都の伝統的な日本庭園のすみからすみまで屋外録音を続け るために。また、庭園と交差点の音の様態のオーディオ記録を広げていくために。
( http://aporee.org/maps/work/projects.php?project=gardenscrossingssonority).

ぺトラ カプス

2013年12月 マリボルにて