コロナ禍の欧州へ 事務局・古木の訪問記(その2)

古木修治|EU・ジャパンフェスト日本員会 事務局長

 パンデミックの中で、旅するとは、こんなことなのだ。羽田からフランクフルト、そして、クロアチアのザグレブへ。
 つい半年前までの羽田空港は、真夜中であっても離発着便が目白押しで、搭乗客、到着客、見送りや出迎えで、ロビーはいつも多くの人であふれかえっていた。
 しかし、その活気が消滅していた。7月22日深夜の羽田空港の出発ロビーには、人影はほとんど見当たらず、出発便掲示板には、私が予約した全日空フランクフルト行き以外はすべてキャンセルの表示。

 半世紀にわたる私の海外渡航歴のなかでも、あり得なかった光景に、これから身を投じる先々に、得体のしれない不安がじわりと意識の底から浮かび上がるのを感じた。しかし、とりあえずは、感染を避けて、現地に到着することに専念するしかない。機内ではフェースシールド、マスクはもちろん、ビニールの手袋まで装着した。トイレでも、まずドアノブを、そして内部でも手が触れる部分は、アルコールのウェットティッシュペーパーで消毒した。完全防護である。やれることはすべてやった。


 11時間後、フランクフルト空港に到着。同じ時刻に離発着する飛行機はなく、広大な空港の敷地内にもう飛ぶことはなくなった数えきれないくらいの旅客機が延々と連なって駐機していた。空港ロビーでは、ほとんどのショップが閉店していた。私は乗り継ぎのザグレブ行きの搭乗ゲートに向かって、人影のほとんど消えた空港内をとぼとぼと一人歩くほかなかった。いつも立ち寄るカフェも、ゲーテ像がぽつんと所在なさげにおかれているだけ。免税店前のアインシュタインも無人のロビーのベンチで寂しげに座っていた。

 これがパンデミックの世界なのだ。

 現実なのに、なぜか人類が消えてしまった世界を舞台にした未来映画が目の前で展開しているかのように思えた。
クロアチアのザグレブに向かう機内では、空虚としか表現できないフランクフルト空港の様子が頭のなかで漠然とリピートされていた。
クロアチアではどんなことが待ち受けているのか知る由もなかった。そして、ザグレブに到着。緊張が走った。

※次回は9月18日掲載