ハンガリー・ヴェスプレーム デジタル体験センターにおける没入型作品の機会と展望

リタ・ワハブ|欧州文化首都ヴェスプレーム・バラトン2024 キャビネット・オフィス室長

2日間にわたる『日本の地平線(Japanese Horizon)』イベントでは、日本のデジタルアーティストが招待され、ハンガリーの観客、学術専門家、イノベーション専門家、アート専門家、CODEスタッフ、ヴェスプレーム大学、フィクサー・メディアラボ、デジタルナレッジセンター、没入型技術に関心を持つハンガリーの同ジャンルの代表者たちと共に、中欧地域における私たちの新しい組織の長期的な機会と戦略を共同で模索することを目指しました。

ヴェスプレームは、文化およびクリエイティブ産業における先進的なデジタル技術の戦略的活用に取り組んでおり、その一環としてCODEが設立されました。CODEは、芸術、技術、社会、科学の交差点に位置する機関を創り、ヴェスプレームのクリエイティブ産業における地位を長期的に推進することを目指しています。『日本の地平線』は、一般のニーズに応えるだけでなく、CODEが地域の統合的で革新的な国際的「ハブ」となる道を切り開く最初のプロジェクトです。

私たちが、日本の専門家やアーティストから学ぶことが出来るのは、彼らのデジタル分野における長期的な経験によるものであると考えています。私たちは、日本のアーティストや専門家との間に有望で持続的な関係を築き始めています。日本のアーティストは世界において、技術と芸術的革新の最前線にいます。また、ハンガリーにおける日本の芸術の高い評価と、ヴェスプレームの人々の日本文化への深い関心も、この取り組みの一部です。

本プロジェクトは、2024年12月12日から14日の期間で開催され、ヨーロッパを拠点に活動している日本人2名、アーティストと没入型アート専門家が招待されました。一人は、アルス・エレクトロニカ・リンツのマネージングディレクター兼アーティスティックディレクターである小川秀明氏。もう一人は、ベルリン在住アーティストのYuma Yanagisawa氏です。

ワークショップの対象者は、CODEチームの他に、没入型技術に興味を持つハンガリーの学術専門家、イノベーション専門家、アートコミュニティです。

このイベントの目的は、アルス・エレクトロニカの数十年にわたる成功と過去の経験を基に、間もなくオープンするCODE – デジタル体験センターの長期戦略の基盤を築くこと、また、出展者だけでなくコンテンツクリエイターの視点からデジタルトレンドを考察することでした。

プログラムは非常に多面的であり、小川氏の経験、専門知識、洞察は新たな組織にとって非常に有益でした。また一方で、Yanagisawa氏の芸術的経験や資料は、創造の神秘に対する重要な洞察とインスピレーションを提供しました。

プログラムは以下のスケジュールに沿って開催されました。

12月12日、両ゲストのヴェスプレーム到着後、昼食会を通して親睦を深めました。その際、2023年のヨーロッパ文化首都としてのヴェスプレームの目標とCODEプロジェクトの概要について話し合いました。

Yanagisawa氏のワークショップは午後4時に始まり、グループは観光をしながら城エリアにあるフィクサー・メディアラボへ向かいました。ワークショップには約25〜30人の参加者が集まり、Yanagisawa氏が自身のデジタルアート作品の制作方法を説明しました。参加者はラボのコンピュータと必要なソフトウェアを使い、実際に作品制作の過程を体験することが出来ました。ワークショップと夕食会には、ヴェスプレーム在住の日本語教師である森田智子氏も同席しました。彼女のお陰でハンガリーでの生活経験を日本語でゲストたちと共有することが出来ました。

12月13日の朝、私たちは小川秀明氏のプレゼンテーションを拝聴しました。クリエイティブな専門家や没入型アーティスト、そしてYuma Yanagisawa氏も参加しました。オーディエンスには、研究者、教師、学生(ヴェスプレーム大学、ブダペスト・デザイン大学)、デジタルアートや人工知能の専門家が含まれました。小川氏は、彼のチームの取り組みである「未来ラボ」について、より多くの聴衆に向けてプレゼンテーションを行い、リンツや日本での経験を交えながら「没入型技術」の芸術的およびビジネス的な視点について説明しました。その後、短い質疑応答が行われました。

昼食後、小川氏によるCODEの現チームのための戦略ワークショップが開催されました。私たちの目標は、長期戦略のいくつかの要素を共同で設計すること、あるいは少なくともCODEを国内外で位置づけるための最も関連性の高い質問を見つけることでした。

両方のワークショップは成功を博し、インスピレーションを得た参加者たちによって予定よりも長く続きました。

小川氏とのワークショップの間、私たちはYanagisawa氏を国の天然記念物であるバラトン湖へ案内しました。これは私たちの欧州文化首都プログラムにおいて重要な役割を果たしています。自然にインスパイアされた作品を私たちに提供してくれたYanagisawa氏にとって、バラトン湖が同様のインスピレーションとなったことを信じています。

その後、Yanagisawa氏は私たちにライセンスおよび委託可能な彼の作品を紹介くださいました。このイベントがさらなるインスピレーションのきっかけとなり、CODEとアーティストとの間に実りある協力関係が築かれることを期待しています。

小川氏とYanagisawa氏の講演は、日本文化とイノベーション、そして私たちのパートナーであるリンツのアルス・エレクトロニカとの関係を大いに強化しました。ワークショップは、この地域を文化的・創造的な拠点として位置づけるという欧州文化首都ヴェスプレーム・バラトン2023プロジェクトの主要な目的に貢献しました。この戦略の枠組みの中で、欧州文化首都は没入型技術を含む新しいメディアに目を向け始めています。

ハンガリーではまだ黎明期にありますが、これらのテクノロジーにより、ヴェスプレームは幅広い学際的かつ創造的な分野でクリエイティブな文化的なイメージを確立することが出来るでしょう。これにより、ハンガリーのクリエイティブ産業の先進的な分野においてリーダーとなることを可能にします。CODEが創出する国内外の様々なコラボレーションやプロジェクトは、ダイナミックなネットワークを構築し、ヴェスプレームはクリエイティブ産業にとって、さらに魅力的な都市となるでしょう。