動きのなかで道が出合う場所

ナスティア・ブレメク・リニア|カンパニーディレクター
MNダンス・カンパニー(Zavod MN Produkcija)

欧州文化首都ノヴァ・ゴリツァ=ゴリツィア2025に至るまでの数年間を振り返ると、『ボーダーレス・ボディ(Borderless Body)』プロジェクトが、どれほど深く私達を、アーティストとして、ダンス・カンパニーとして、そしてコミュニティとして形成してきたか、思い巡らすことがしばしばあります。テクノロジーとロボット工学、そして人間の身体の探究として始まった本プロジェクトは、次第にはるかに大きなもの、すなわち、繋がりや協働、芸術的アイデンティティの旅へと変容を遂げていきました。この道のりにおいてとりわけ意義深い側面のひとつとなったのが、紛れもなく日本人ダンサー西原瑛里氏との協働であり、彼女の存在は、私達のアンサンブルと創作プロセスのあり方に、深い刻印を残しました。

瑛里氏は、2021年、私達の作品『イカロス(Icarus)』を契機に、MNダンス・カンパニーに加わりました。当初より、彼女の卓越した技量とオープンな姿勢、そして芸術に向き合う規律性の高さが際立っていました。彼女は、好奇心と、動きの質感に対するほぼ本能的ともいえる感受性をもって私達の創造的世界に足を踏み入れ、それが彼女の貢献が長く続くものであることを明確に示しました。2022年には、『パーペチューム・モビーレ(Perpetuum Mobile)』プロジェクトでも、彼女は私達との協働を継続し、2023年に当カンパニーが正式に安定したコンテンポラリーダンス・カンパニーとして確立された頃には、瑛里氏は、自ずと当アンサンブルにとって欠かせない柱のひとりへと成長を遂げていました。彼女は、並外れた奥行きを備えたパフォーマーであるだけでなく、日々のトレーニングに貢献する重要な存在で、私達がウォームアップの一環で行うバレエクラスの指導にあたるとともに、カンパニー全体の芸術的発展を支えています。

2025年は、パフォーマンス作品『プロメテウス(Prometheus)』の初演で幕開けを飾りました。欧州文化首都ノヴァ・ゴリツァ=ゴリツィア2025に向けた準備中、私達は数年にわたり、テクノロジーやロボット工学、そして変容し続ける人間の身体に関するテーマのリサーチを行っていました。この期間に制作されたそれぞれの作品が、これらのテーマの断片を内包しながら、徐々に私達を『ボーダーレス・ボディ』プロジェクトの核心へと導いていったのです。私達のダンサー達は、数年を費やし、有機的な人間の表現と機械的な精密性とのあいだの緊張関係を映し出す動きの言語を培って参りました。その融合が、私達の欧州文化首都の制作作品の象徴的要素となったのです。

この一年で記憶に残る節目のひとつとなったのが、ネダ・ルーシャン・ブリツ氏の演出による、欧州文化首都ノヴァ・ゴリツァ=ゴリツィア2025開幕式でパフォーマンスを披露したことでした。何千人もの観客を前に舞台に立ちながら、私達は、ノヴァ・ゴリツァとその芸術的ヴィジョンを代表することの重みと名誉の両方を感じていました。あの夜、空中に満ち溢れたエネルギーは、決して忘れ得ぬものがありました。それはまるで、私達が長い試練の年月をかけて築き上げてきた全てのものへの祝福のように感じられました。

5月、私達は、ノヴァ・ゴリツァのヨーロッパ広場を舞台に展開した、ビル・ヴォーンとルイ=フィリップ・デマーズとの共同制作によるパフォーマンス作品『インフェルノ(Inferno)』で協働しました。それは完全に唯一無二の体験でした。今回に関しては、私達の動きが、自分達の身体と直に相互作用するロボットによって導かれたのです。

©MN Dance Company / Natalia Polonskaia

7月には、スロヴェニア、イタリア、クロアチアを一望し、晴れた日にはオーストリアまで見渡せる稀有な場所、ツェリエの平和記念碑を舞台に、私達にとって最大規模の作品『ボーダーレス・ボディ』の初演を披露しました。その風景そのものが、歴史と記憶を宿し呼吸しているかのように感じられました。ツェリエへと続く道には、スロヴェニア史上最大の火災の傷跡が残る一方で、山頂では静謐さと美が広がっています。この場所で本パフォーマンスを発表することは、強靭性そして再生への可能性を肯定するものとして、象徴的に感じられました。ライブミュージシャンのボリス・ベンコ氏とプリモジュ・フラドニク氏の演奏とともに、本作は、急速に進化を遂げるテクノロジーの世界における人間の身体の位置づけを探究しました。本パフォーマンスは、夕暮れ時に開始したこともあり、それはまさしく魔法のような体験となりました。公演はいずれも完売となり、終演時にはスタンディングオベーションが続きました。観客からは、深い感動とインスピレーションを感じたという声が寄せられ、欧州文化首都2025における芸術的ハイライトのひとつとなりました。

©MN Dance Company / Natalia Polonskaia

8月、私達は、毎年恒例のプログラムであるMNサマー・インテンシヴ・プログラムを開催し、世界各地から34名の若手ダンサーを迎えました。ここでも瑛里氏は、バレエクラスでの指導やリハーサルの補佐、そして当カンパニーのレパートリーを次世代に継承する一助を担うなど、重要な役割を果たしました。舞台に注ぐのと同等の忍耐と情熱をもって学生達と向き合う彼女の姿を目にし、未来のアーティストを形成する上で、文化交流がいかに大切であるか改めて気づかされました。

©MN Dance Company / Natalia Polonskaia

秋には、3つの振付作品で構成される新作パフォーマンス『ポエティカル・ボディ』の制作を開始しました。私達は、ルカ・シニョレッティ氏とマシャ・カガオ・クネズ氏をゲスト振付家として迎え、ミハエル・リニアと私とともに、当アンサンブルの新作の制作を行いました。本パフォーマンスは、11月30日に上演され、これに続いて1月には、SNGノヴァ・ゴリツァでの公演が予定されています。また私達は、欧州文化首都の閉幕式の舞台で演じるという栄誉にも恵まれました。

©MN Dance Company / Natalia Polonskaia

MNダンス・カンパニーの創設者であり、振付家で芸術監督でもあるミハエルと私は、折に触れて、数々の困難に直面しながらも、ノヴァ・ゴリツァに安定したコンテンポラリーダンス・アンサンブルを築くことを夢見ていた創設当初の日々を思い返します。国境の街であるノヴァ・ゴリツァは、ダンスには言語の壁が存在しないと信じるカンパニーにとって、常に然るべき場所だと感じられました。そして今、欧州文化首都のおかげで、その夢は現実のものとなったのです。

私達の活動をご支援いただき、またとりわけ西原瑛里氏との継続的な協働を可能にしてくださったEU・ジャパンフェスト日本委員会に、深い感謝の意を申し上げます。彼女は、芸術的貢献をもたらしただけに留まらず、ノヴァ・ゴリツァの人々の心に触れたのです。

今後に向けて、私達は、安定したコンテンポラリーダンス・カンパニーとして活動を続け、国境を越えて人々を鼓舞する作品を生み出していくことを志しています。欧州文化首都がもたらす文化的レガシーを継承していきながら、『ボーダーレス・ボディ』の身体と動き、そして精神が、長年にわたって息づいていくことを願っております。