コラム
Column大友良英スペシャルビッグバンド2024年ヨーロッパツアー
私は、オスロを拠点とするブッキングエージェンシー「No Earplugs」創設者のマルウィナ・ヴィトコウスカと申します。ノルウェー、日本、米国の、ジャズや自由度の高い冒険的な音楽分野のアーティストの代理人を務めています。2019年末に、大友良英氏とともに活動を開始しました。
大友氏は、国際的な前衛およびノイズ音楽シーンにおいてすでにレジェンド的存在となっています。彼は、Ground-Zero(グラウンド・ゼロ)や大友良英ニュー・ジャズ・クインテット、そして現時点での大友氏の集大成といえる大友良英スペシャルビッグバンドといった卓越したプロジェクトを主宰していることで知られています。協働を始めた当初から、私達は、欧州でスペシャルビッグバンドのライブツアーを開催するという夢の実現に全力で取り組んで参りました。資金探しやツアーのブッキングなど、数年にわたる準備を要しましたが、ついに私達は夢を叶えるに至ったのです。大友良英スペシャルビッグバンドは、2024年10月に欧州初上陸を果たし、リトアニア、ポーランド、英国、スロヴァキア、イタリア、ベルギー、ドイツといった欧州の7つの異なる国々で、合計12回のコンサートを開きました。
本ツアーは、2024年10月17日、ヴィリニュス・ジャズ・フェスティバルで開幕を迎えました。スペシャルビッグバンドは、500人収容可能な美しいヴィルニュス古劇場で最初のコンサートを上演しました。このコンサートは完売し、観客からの反響は、私達の期待を超えたものでした!デジタルマガジン『クルール・ジャズ』のオンラインレビューで、本公演についてティエリー・ケヌム氏がこのように端的に表現しています。「その夜のトリを務めたこの大所帯の日本の『スペシャルビッグバンド』は、自らが受けたロックやポップス、クラッシック音楽、さらにフリージャズからインスピレーションを得ており、観客を完全に虜にする魅力があります。ソロ演奏よりもマス・サウンド効果が圧倒的な、見事な融合です。美しい音色の質感とダイナミズムを備えた、極めてオリジナリティの高いサウンドといえます。」
本ツアーは翌日、引き続きポーランドのカトヴィツェで行われ、ここでビッグバンドは、最大収容人数1,200人という巨大なコンサートホールで演奏を披露しました。このコンサートには、およそ900名の人々が来場し、ミュージシャンと主催者ともに、本イベントは大成功を収めたと受け止めました。コンサート終演後には、来場者がミュージシャン達と対面し、写真を撮ったり、CDにサインをもらったりするために、列をなして待っていました。
本ツアーのもうひとつのハイライトが、ワルシャワの伝説的クラブPardon to Tuでの二夜連続公演で、コンサートは両日ともにソールドアウトとなり、各日300人を超える観客を動員しました。初日の夜は、スペシャルビッグバンドが、アルバム『Stone Stone Stone』から楽曲を中心とした定番のレパートリーを披露しました。二夜目は、盆踊り音楽とテレビドラマ『あまちゃん』のサウンドトラックの音楽に完全に徹した演奏となりました。欧州の観客がこの種の音楽を生で耳にするのは今回が全く初めてであったことから、大友氏は多少緊張している様子でした。ところが、彼の懸念は瞬く間に晴れました。観客はその音楽にすっかり熱狂し、最後の最後までコンサートを楽しんだのです!
ロンドンでは、当バンドが、ロンドンでCafe OTOを舞台に3日間に及ぶレジデンシー公演を行いました。全夜ソールドアウトとなり、これらのコンサートを観ようと英国全土および海外からの熱烈なファンが集まりました。二日目には、大友氏がおよそ30名の若手ミュージシャンとともに、即興演奏と大規模アンサンブルの指揮に関するワークショップを実施しました。雑誌『ジャズワイズ』で、ゲイル・タスカー氏がこのように述べています。「レジデンシー公演は完売していたようですが、月曜の夜には、ファンや通行人などの小さな人だかりが会場の外に群がり、OTOの大きな窓越しに耳を傾け、良英氏のアンサンブルが放つ爆音の恩恵を存分に受けていました。」
3日間のレジデンシー公演は、まさに驚異的で、観客からのフィードバックや反響が、これが忘れ難いイベントであったことをただただ裏付けていました。「Cafe Otoの歴史上最も歓喜に満ち溢れた最高な三日間でした!」とCafe Otoのプログラムを担当するフィールディング・ホープ氏は語っていました。
スペシャルビッグバンドは、伝説的なジャズフェスト・ベルリンで本ツアーの締めくくりを飾りました。日曜日の朝には、「ラボ・モアビット」と呼ばれるコミュニティプロジェクトに、バンドメンバーが揃って参加しました。彼らは屋外の遊び場で、小さな子供達やその両親、フェスティバル参加者をはじめ、地域の地元住民など、大勢の人々に向けて演奏を披露しました。彼らが愉快な音楽を演奏すると、誰もが踊り始め、人生と音楽を朗らかに祝福ながらバンドに加わったのです!その後の晩、本フェスティバルは、ついに閉幕コンサートのときを迎え、またこれが大友良英スペシャルビッグバンドの初欧州ツアーにおける最終コンサートとなりました。ウェブサイト『All About Jazz』で、ジョン・シャープ氏はこのように述べています。「このフェスティバルが、静かなる祈りで開幕したとするならば、それは大友良英スペシャルビッグバンドという姿で現れた延々と続く大爆発で幕を閉じたといえるでしょう。(中略)秀逸なフェスティバルの秀逸なエンディングでした。」
本ツアーは驚くほど順調に進み、その成果は私達の夢をはるかに上回るものでした!ほとんどのコンサートが完売となり、観客数の幅もおよそ200人から900人までとさまざまでした。多くの方々が、人生で観たなかで最高のコンサートだった、これほどまでに素晴らしいライブパフォーマンスは体験したことがなかった、と私に語ってくれました。その情景は、彼らそして私達の心に永遠に息づいていくことでしょう!私は、スペシャルバンドと一緒にお仕事ができたことを、非常に光栄に感じています。私と大友氏だけでなく、私達とこの夢をともに分かち合ってくれたバンドの全メンバー、そしてもちろんファンや観客の皆さんにとっても、これがその夢を叶えるツアーとなったことと私は思います。本プロジェクトは、近い将来、欧州でさらなるツアーを行っていく大きな可能性を秘めています。観客や主催者からいただいたフィードバックは本当に素晴らしく、それが私達に、さらにたくさんのツアーが開催できるという自信を与えてくれています。これで最後になることなく、再び欧州あるいは世界の他の場所で、本プロジェクトをお届けできることを私達は望んでいます。