コラム
Columnエストニアの歴史と伊勢の未来に繋がる音楽の可能性
初めてエストニアへ訪問した夏から、季節は寒い冬へと移り、次は花が色づき始める春がやってきました。初めて訪問した6月、そして日本語指導として訪れた12月、エストニア大使が伊勢訪問した1月、エストニア4人の先生方が伊勢訪問した2月末と3月、あっという間に様々な行事が過ぎました。8月に予定されています、我々のエストニア訪問のプロジェクトも早々と迫ってきていると実感しています。初回にエストニアへ訪問した際は、街や文化、そしてプロジェクトを共に遂行するエストニアの団体について知ることで精一杯でしたが、2回目の訪問は、合唱団の練習に参加することや指導者の先生たちと交流する機会が多く、2025年8月に予定しているSorcièreのエストニア訪問の詳細な予定についても相談することができました。

2度目の滞在で、TallinnではETVgirlsの指揮者であるAarneと行動を共にしました。彼の行動はいつも突発的で、滞在中、我々はエストニア公立学校の音楽の授業に参加することになりますが、その提案も到着した後に決まりました。学校見学は他国の教育制度ということもあり、とても興味深いものでした。彼が受け持っている子供達の年齢層は7歳から10歳であり、中には集中が切れてしまう子もいて、そのような子供達の様子を感じ取りながらAarneが様々な音楽ツールを利用しながら子供達を指導していました。そのような姿を見て、彼の純粋に子供達に音楽を楽しんで欲しいといった気持ちを感じました。また、学校では先生達が我々を歓迎してくれている姿勢や、子供達が授業後にハグや様々な質問を求めてくる姿は、エストニアの国民性がとても自由であることを表しているようにも感じました。特に、エストニアの子供達は自身の思いに忠実で、それを恥じる事なく行動に移している印象を受け、それは、エストニアの大人達からも感じる、人々に対する愛情や自立した行動力といった部分から、子供の頃から培われているように思います。
最終日に、ETVgirlsの練習会場で日本語のレッスンを行いました。ウォーミングアップや普段の練習風景を見学して、日本語指導を行い、最後には12月のコンサートで演奏したクリスマスソングを披露してくれました。いつも心に響く美しい音楽を作り上げるETVgirlsですが、今回はコンサート会場という固い場ではなく練習場所というのもあり、本来の彼女たちの姿を見ることができたと思いました。というのも、2曲目にエストニア語で“Santa Claus is coming to town”を歌ってくれたのですが、Aarneのジャズスタイルの伴奏に合わせてメンバーの体はノリ始め、何人かのメンバーは顔を合わせて軽く踊り始めました。なんとなく、その光景は私には信じられないもので、こんな形で合唱を演奏する団体が存在するなんて、と感動したことを覚えています。彼女たちが体を動かしながらメンバーと共に音楽を作り出す姿は、本来の音楽が持つ自由さを私に気づかせてくれました。メンバーたちがこのように音楽を楽しむことができるのも、Aarneの指導力スキルの高さだと、身をもって感じました。
次にTallinnからTartuに移動して、Laulupesaの先生方と会いました。Laulupesaには先生が10人ほどいますが、彼女達はいつも私たちに優しく接してくれます。今回は、彼女達が普段行っている様々な年齢層のレッスンを何度か見学させていただきました。印象的だったことは、どのレッスンでも歌い手側が指導者に様々な質問をしていることでした。指導をしている途中でも、分からないことがあればすぐに発言して、指導者だけでなくメンバーも一緒に解決に努める様子は、日本ではあまり見られない光景のように感じました。そのような環境は、失敗することに対する不安を感じさせず、音楽は純粋に楽しむものという先生達の想いを受け取りました。また、私たちが日本語曲のレッスンを行なった際に、Laulupesaの創始者であるAiriが日本とのプロジェクトのために曲を書いた“Üle heliseva ilma”(Over the singing land)を、エストニア渡航の際に一緒に歌う女の子たちと共に披露してくれました。歌詞には「歌声が自分たちを自由にする」という意味が含まれていて、曲は終始幸せな平和を感じさせるような和音が鳴り響くような曲でした。Laulupesaとこのプロジェクトを遂行することは、彼女たちが国を超えて我々伊勢の街と音楽を通じて繋がることに喜びを感じていることが伝わったと同時に、私も彼女たちやAarneと出会えたことに喜び、そして誇りに思います。

そして、今年2月末にはエストニアから4人に伊勢市へ訪問していただいました。伊勢市のことをより知ってもらうために伊勢神宮など、伊勢の歴史を辿ることができる場所を巡っていただき、エストニアとは異なる文化を持つ伊勢に対して、先生方はとても興味深そうな様子で、終始様々な質問を私たちに尋ねてくれました。Sorcièreのメンバーとは、エストニア語曲の指導だけでなく、ディナー会を開き、お互いに知る場を設けて交流を行いました。シャイな学生たちのため、初めは緊張していましたが、エストニアのダンスを先生、学生たちと一緒に踊った際、いつも人々と音楽を楽しむ先生たちの姿勢から、次第に彼ら自身をさらけ出すことに努める姿が見受けられました。エストニアのダンスはとても簡単で、同じステップを繰り返して手を繋ぐなどのスキンシップを取りながら踊るものが多く、単純で分かりやすいこともあり、日本のメンバーたちもすぐに先生たちと打ち解けて踊っていました。先生方が持つ子供に対する愛情ゆえに、見ることができた光景だと感じました。
このように、6月の訪問から始まり、3月のイベントまで終了しましたが、ここまで得ることは沢山あったと感じています。関わる団体の先生たちはもちろん、エストニアのメンバーたちとは顔を直接見て会話をすることで、よりエストニア人が持つ優しさや素直さを知ることができました。彼らのエストニア人としての誇りや、音楽に対する敬意は、日本社会に欠けていることではないかと考えると共に、Sorcièreのメンバーが8月に渡航した際には彼らのマインドを知ることで、生きる上で大切なものは何かを考えるキッカケになれば良いなと思います。素直になることは恥ずかしいことではなく、強い心だからこと成せる行為であり、それが少しでも伝われば幸いです。