うたう事を通して感動を伴う体験を!!

メイジャー佐知子|所沢フィーニュ少年少女合唱団 指揮者

「ラトビアに行かない?」スウェーデン大使館で古木事務局長に声をかけて頂いたのは3月中旬でした。 フィーニュがラトビアに・・・?あと4ヶ月しかない準備期間、これから新学期を迎える子ども達がどれだけ参加出来るのか、色々な不安が頭の中をグルグルしました。ただ、私も子どもの頃から知っている合唱大国ラトビア。そこで行われる歌の祭典!!このような素晴らしい機会を頂けるのは最初で最後に違いないとも思いました。今私の目の前にいるやる気に満ちた素敵な子ども達を是非連れて行ってあげたい!そんな思いとともに、いつも惜しみない応援と後押しをして下さる保護者応援団のもと、結論を出すのに時間はかかりませんでした。

2010年欧州文化首都ハンガリーのペーチに参加させて頂いてから4年・・・今回はメンバーの半分が12、3歳という若いチームでした。準備の段階から親子一丸となってラトビアに向けて万全の態勢を整えました。若い子ども達なので気持ちの面にもとても気を使いました。不安な気持ちを楽しみに変えて出発出来るように・・・準備万端で出発の日を迎えました。

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子ども達は想像以上にたくましかったです。とてもハードな毎日でしたが、だれも泣き言は言いませんでした。一度だけ、WCG(ワールドクワイヤーゲーム)のリハーサル時の豪雨のあと全身びしょぬれになり、またいつ降るかもしれない雨に怯え、バスの中で疲れきっていた時、あと30分後の本番に浴衣を着るかどうか・・・小さい団員達は気力をなくしていました。その時、「せっかく来たのに、ここでへこたれるの?」と、大きい子ども達の声があがりました。良かった!頑張れる!お互いに励まし合って、バスの中での早着替え。
結果、本番中に雨が降る事はなく、あんなに素晴らしいステージにJAPANとして堂々と立てた事、子ども達の心に深く刻まれたことと思います。2万人の大合唱は、まさに壮観でした!ラトビアの人々の心の叫びのようにも聴こえた歌声、どこか寂しげで、でも温かい。そんな歌声を心地良く感じながら、もし日本だったら・・・と考えた時に、思いつく歌がなかったのは少し寂しい事でした。

私達フィーニュは、常日頃より外国の合唱団と交流をする恵まれた機会を頂いて来ました。その度に、子ども達はその国の言語でその国の歌をうたえるように練習をしてきたのですが、今回のWCGは、その取り組みの成果を得られた良い機会となりました。まず会場でハンガリー語の歌をうたおうと、ハンガリーの子ども達を探しに行ったフィーニュ軍団…遠くの方で輪になり歓声が上がったので、一緒にハンガリー語の歌をうたっているのだと思ったら、ロシアの子ども達とロシア語で【カチューシャ】、その後も南アフリカの子と彼らの言語で【スィヤハンバ】を歌ってきたという事でした。その国の言語でうたうという国際交流を立派に出来ている事に感心するとともに、うたう事を通して出来上がる子ども達の「輪」に感動しました。そこでは言葉の壁なんてありません。会話は出来なくとも、言葉の代わりに歌で感動を分かち合い、国を越えて仲間になれたのです。嬉しそうな子ども達を見て、本当にここに来られて良かったと思いました。

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また、今回どうしても・・・と組み込んで頂いた教会コンサート。教会の響きの中で子ども達にうたわせてあげたいとずっと思っていたので、実現出来て最高に嬉しかったです。リハーサルもなく、衣装は残念ながらTシャツに短パンでしたが、子ども達は素晴らしかった!歌い初めから目頭に熱いものが込み上げてしまった私は、こらえるのに必死でしたが、子ども達の顔を見たらもうアウト。誰が初めに泣いたのか?みたいな事になりましたが、それは間違いなく私でした。子ども達に、うたう事を通して感動を伴う体験を!と言いながら、いつも一番感動しているのはこの私です。感動の渦に巻き込まれてしまいました。それがお客様にも伝わって、感動して頂けたのだと思います。歌い手が感動して初めて聴き手に感動して頂けるのだと、改めて感じたコンサートとなりました。またとない体験が出来た事、このコンサートをアレンジして下さった方々に感謝申し上げます。

青少年国際音楽祭は、晴天の中、にぎやかな雰囲気で行われました。野外ステージは、音響の事やピアノの事、本番を迎えるその日まで心配ばかりでしたが、当日はそんな事より私の衣装・・・そしてトランクのないチームの子ども達の浴衣の手配・・・こんな事が起きるのは想定外でしたので、実は初日から結構凹みました。(子ども達には悟られないように・・・)けれども、グンタ先生とリガ・チェンバークワイヤーの皆さんのおかげで、思いがけずラトビアの衣装を着せて頂くという貴重な体験をする事となりました。臨機応変で柔軟な対応は本当にありがたかったです。子ども達の微妙な顔、今でも思い出すと笑ってしまいますが、浴衣の子ども達とラトビアの民族衣装の指揮者は、ラトビア限定の素敵な思い出になりました。本番は、華やかなステージで子ども達もみんなとても嬉しそうでした。マイク調整を含むリハーサルも出来なかった為、色々なハプニングはありましたが、度胸と笑顔で乗り切った子ども達はさすが!ステージを降りた私に、おばあさんが日本語で「ありがとう」と言って、赤い実がたくさん入ったバスケットを下さいました。目には涙を浮かべていたように思います。日本語が分かる方だったのか、私達の歌に感動して下さったのか、お話ししてみたいと思った時には、もうその姿はありませんでした。教会でうたった後もそうでしたが、ラトビアの人々からは、その心の奥底に秘めた優しさ、温かさをいつも感じる事が出来ました。それは、大人も子どもも忙しすぎる私達日本人が忘れてしまった大切なものなのかもしれません。

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今回子ども達は6日間のホームステイという、大変貴重な体験をさせて頂きました。子ども達のレポートにも書かれているように、ラトビアの家族はまるで我が子のように子ども達を受け入れて下さいました。それは、毎朝子ども達の顔を見れば一目瞭然でしたし、目を輝かせて報告してくれる色々な話から伺い知る事が出来ました。本当に、本当に感謝しています。

子ども達にとっては、全てが新鮮であったに違いない今回の遠征・・・世界の中の日本を感じ、日本人としての自分を見つめる機会も多くあったのではないかと思います。うたう事を通して、こんなにもたくさんの素敵な出会いを経験し、うたう事の偉大な力を身を以て感じた子ども達・・・それは必ずや今後子ども達の未来を変えていく力になるだろうと確信しています。

EU・ジャパンフェスト日本委員会の皆様はじめ、フィーニュのラトビア遠征にご尽力頂いた全ての皆様に感謝致します。また、このような素晴らしい活動が今後もぜひ継続される事を、心より願っております。本当にありがとうございました。