コロナ禍の欧州へ 事務局・古木の訪問記(その9)

古木修治|EU・ジャパンフェスト日本委員会 事務局長

バレエが世界を結ぶ

2021年の欧州文化首都はギリシャのエレフシナ、ルーマニアのティミショアラ、そして、セルビアのノヴィ・サドとバルカン半島の3都市が選ばれ、5年前から準備を始めている。
添付の地図を見てほしい。アドリア海、地中海、エーゲ海、黒海に挟まれているのが、バルカン半島だ。以前、ノヴィ・サドを訪ねるために、アテネからベオグラードへ空路移動したことがあった。バルカン半島を北上、ギリシャ、北マケドニア、そしてコソボの上空を飛び続け、ベオグラードに着陸。飛行中、眼下に広がった景色は深い森林、雪を頂く山々、大平原が広がり、どこまでも大自然の世界であった。

バルカン半島は、ヨーロッパやアジアと陸続き。

この地図には西のイタリア、北のポーランド、東のウクライナ、トルコ、そして南のギリシャとこれだけの限られた地域でなんと21か国がひしめき合っている。地図には明確に国境線が引かれている。私同様に多くの読者は、白地図を示されたら、この21か国を正確に言えることは難しいのではないか。しかし、フライト中眼下に広がるバルカン半島の大地に国境線を確認することは出来なかった。

いきなりだが、話は太古の昔に飛ぶ。現代の多くの科学者が「東アフリカで200万年前、最初の人類が誕生した」との学説で一致している。気の遠くなるような長い歴史のなかで、人間は移動を繰り返してきたのだ。現代において政治や経済問題が絡むと、利害の対立から、「反グローバル」や大国による「自国ファースト」という考え方が盛んに叫ばれる。一方で、欧州文化首都は、まさにグローバルな視点で、民族、国籍、宗教、言語の違いを乗り越える活動なのである。

今回、ノヴィ・サドでのプログラムの打ち合わせで、最初に国立劇場のマネージャーのセンカ・ペトロヴィッチ(Senka Petrović)さんにお目にかかった。

情熱とパワーあふれる国立劇場のセンカさん。

2021年5月に欧州文化首都の重要プログラムの一つである「マダム・バタフライ」のバレエ公演の実現を目指し奮闘している。本公演は、セルビアとオーストリアの両バレエ団との共同制作で、衣装は日本人デザイナーが担当するそうだ。また、両バレエ団には日本を始め、ヨーロッパ各国のダンサーが所属している。EU・ジャパンフェストもこの実現への支援を表明している。

今や世界中のアーティストは活躍の場を求めて、国境をどんどん乗り越えてゆく。日本から世界へ、世界から日本へ、彼らの活躍の舞台は地球全体だ。バレエもまさに世界を結んでいるのだ。

国立劇場の客席。来年、満席の観衆を夢見て。

※次回は10月2日