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[Vol.103] アートは気づき

池澤 孝

ツクバアートセンター・芸術監督・キューレター・アーティスト

日常のありふれた景色や世界の中に感性の核が存在していると思います。その存在の意識を感じる事ができる瞬間があります。その瞬間に触れる事でそれまでに見たこともない、体験したこともない物を発見することができると考えています。その発見は、自分について他者について、また世界についての見方を変換させる力を持っていると思います。これが気づきの一歩だと私は考えています。そして我々芸術家は、この気づきを表現し、観た人をこの体験的理解(気づき)に導くような何かを創り出そうと活動しているのです。とは言いながら私自身も作品を制作するたびに感性の気づきを体験しているのであります。

私自身が作品を制作する際にいつも大事にしている事のひとつとして、その土地の持っている磁場を読み取ること、つまりその土地との対話からから始めます。私の表現の根底に人間と自然との共生という考え方があります。考え方というよりも意識といったほうがよいでしょう。ランドアートやネイチャーアートといった作品は、まさに人間と自然との共生をテーマに掲げているものです。なんでもない小石や枯枝をアーティストがそれを使い作品を制作することによって枯枝に意識が生まれ新たな存在となります。この世界の中で人間と自然との新たな共生関係を創り出すことが可能となり共生空間を生み出すのです。

この共生空間がランドアートによる体験的理解へと導く要素と言えましょう。

今回私は、この緑豊かなビバーズバーグ公園内の池に導かれていきました。私は、この池から発せられた静かなエネルギーに引き寄せられていきました。それは一面に藻が繁殖しており、私の中の何かが強く動かされた感覚がありました。そして私は、この池と気づきの対話(制作)を始めていきました。

copyright: Mad Paule

以前にエストニアの展覧会において、同じような藻に覆われた池に遭遇して、作品を展開したことがありました。その時は、藻のある風景と藻の存在しない風景を同時に表現し、藻の取り除いた水面に光を差し込むインスタレーションをしました。今回は、水面に差し込む光の意味を表現したいと考えました。そこには日本人にとって切り離せない仏教の教えの禅を私なりの直観的な解釈で形に表しました。

禅には6個の中心的な教えがあります。それを六波羅蜜「ROKUHARAMITSU」といいますが、少し説明したいと思います。

1「FUSE」布施・・・与えることです。お金とか物だけでなく、気持ちや感謝など目に見えないものもそうです。与えることが目的でなく、大切なのは与える動機にあります。

2「JIKAI」自戒・・・戒律、規律を守ることです。

3「NINNJOKU」忍辱・・・耐え忍ぶことです。我慢することではなく、物事をあるがままに捉えることで苦痛が苦痛でなくなるという修行を意味します。

4「SYOUJIN」精進・・・頑張る事、精いっぱい努力をすることです。

5「ZENNJOU」禅定・・・いかなる状況にも冷静であることです。

6「TIE」知恵・・・われわれ人間の持つ個別的な特殊な経験を全て超越するような何者かを当体的に直感する。(鈴木大拙、エーリッヒ・フロム、リチャード・デマルティーノ著「禅と精神分析」より)

簡単に言うと閃きや衝撃です。知恵は、頭の中のあるものを引っ張りだそうとしても出るものではありません。

丸・三角・四角・・・丸は平和・三角は祈り・四角は囚われた物という位置づけをし、インスタレーションしました。岸辺には、滞在中ホストファミリーであるミエ・フーイスマさんにガーデンファニチャーを提供して頂きました。それに色を塗り替え再生しインスタレーションしました。禅では瞑想をします。ぜひこの椅子に腰かけて「ROKUHARAMITSU」について瞑想してほしいと思います。そして私の作品を観る事によって何かの気づきの一歩になってくれたら、この上なく幸せです。自分の取り巻く環境を認識し知識(知恵)が生まれ、明確になりそして行動に移す。何かに気持ちを向けるための活動を始めてほしいと思います。とてもありふれた日常に全てがあるのだと知ってほしいと思います。

copyright: Mad Paule

前にも触れましたが、この作品も人と自然との相互作用によって想像された文化的共生空間なのであります。芸術と宗教的な発想を取り入れ一体化させた空間を演出したものであります。

時代と共に社会が変容していくであろうが、自然を損なわず人間の心を豊かにする作品を創出し続けていきたいと思っています。

– 誰もが芸術家である – で人間の創造力の可能性に注目したドイツの有名なアーティスト・ヨゼフ・ボイスは1984年に国際交流基金が招聘し来日しており東京での講演後彼と握手した記憶があるが、その彼がオランダ・フリースランドにルーツがあることがわかりとても驚いています。

copyright: Mad Paule

最後になりましたが今回の展覧会のレイナ・ロディナ・ファン・デア・マイヤー・クリエイティブ・プロデューサーを中心にしたアートキャンプは、テイトジャーク村の難民をテーマにしたストーリーや発想を得て参加した全てのアーティストの各パートナーとして作品を創り出し、全体的なハーモニーを創り出していました。素晴らしいキャンプでした。自分がこの地でこのような機会を得て制作に臨めたことを心から感謝いたします。

また私の滞在や制作にあたり地域の方々の協力や支援にも深く感謝いたします。

 

参照 
https://youtu.be/Vs15yiHvHTQ
http://madpaule.tumblr.com/ 
https://www.dereis.frl/nieuws/al-vertellende-onderweg-artcamp-fertellendeweis-in-tytsjerk/
https://www.facebook.com/ArtCampTytsjerk/videos/2333896273566527/

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