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[Vol.93] 本当の交流と子供たちの成長

渡邊芳恵

ピアニスト

「どなたか先に現地に行って、打ち合わせをしてきてください」

今回の私の海外遠征は、その一言から始まりました。

私たちは7年前、リトアニアで行われた国際青少年音楽祭に参加し、EU・ジャパンフェスト日本委員会の古木さんに出会いました。その頃は、故池田代表が海外遠征の全てを準備してくださいました。その頃は、この遠征の目的を理解して、いえ、理解したつもりで、ピアニストとして参加しました。

そして、7年後、年明けに今回のお話をいただいた時は、単純に「楽しそう!」という想いが先行、「行きたい!」と原先生にお話ししました。そして数か月後のこの一言…他人事のように感じていた遠征が、一気に自分の責任となり、目に見えない不安と戦うことになりました。

〇4月視察

視察に行かなければいけない、本当にその覚悟が決まったのは、1週間前。後戻りできない状況に、気も進まない中、渡欧準備をしました。唯一の救いは、宮城三女OG合唱団の遣水さんが一緒に行ってくださる、ということでした。行きの飛行機では、遣水さんに、今まで参加した団体、海外で起こりうること、どんな打ち合わせをするか、9月のコンサートまでにすることか、等々詳しく聞きました。

 スペイン、ポーランドでの打ち合わせ、英語で話されるのを、私は頭の中で日本語に訳しているだけでした。英語を最後に勉強したのは高校生の時。英語を話す状況 になるとは想定してない上での学習の記憶など、何の役にも立たず、1か国目の打ち合わせで話したことは一言二言。これではいけないと思い、ホテルでは文章を考え、電子辞書で調べて、次こそは!と臨んだ2か国目の打ち合わせは、大勢のスタッフが同席、その中で飛び交う会話を理解するのが精一杯、という散々な状態。自分に対し焦るばかりでした。

打ち合わせ以外の時間は、本当に有意義で、海外に慣れておられる遣水さんの行動力に引っ張られながら、どこでも行けました。ビルバオでは、町の方に英語でバス停の場所を聞きましたが、返答はバスク語でした…一瞬途方に暮れたものの、身振り手振りで理解し、バス停にたどり着きました。海外に飛び出すおもしろさを知ったのはこの時かもしれません。

〇視察~出発

5月に入り、一気に海外遠征への準備が加速しました。県の助成金申請、子供たちの学校への対応、航空券の手配、ホームステイの準備、各国担当者とのメール…初めてのことばかりで、私は常に満杯状態。特に私を悩ませたのは、英語でのメールのやり取りでした。英語の文章の書き方、表現など、正しいのか、伝わるのか、いつも疑問に思いながら、電子辞書と携帯電話の翻訳アプリを駆使して、やり取りを続けました。「一つ一つをきちんとこなさなければ、9月はやってこない」そう考え、何かに追われるように準備を続けていました。

〇出発、帰途

出発の空港に集まった子供たち、楽しみ~という顔、一瞬見せる不安な顔…彼らを見ながら、空港で私は新たな覚悟を決めて出発しました。

「とにかく無事に帰ってくる。」

 視察の甲斐もあり、飛行機の乗換え、出国入国もスムーズ、ヴロツワフ空港に到着。夜遅くの到着にもかかわらず、ステイ先の家族は大勢で出迎えてくださいました。事前に連絡を取り合っていた家庭もあり、安心して子供たちを引き渡しました。「やっと1日目終わり!」そうホテルでほっとしたのを覚えています。

ヴロツワフの日程は、足が棒になるほど歩き、そのままコンサートに突入、の毎日。国際青少年音楽祭では、装飾が十分に施され、響きのある会場、満席のお客様の熱気に後押しされ、子供たちも私も心地よく演奏できました。合同演奏「森へ行きましょう」は会場一体がまるで手をつないでいるような、そんな感覚でした。

                                                                                        

素晴らしい思い出をもって、ヴロツワフを出発する日、子供たちに大切な話をすることとなりました。「ヴロツワフでホームステイは2人ペアでしたが。次のサン・セバスチャンでは1人ずつです…」動揺するだろうと思いましたが、大人の心配をよそに子供たちは次のホームステイに向け準備を始めました。これには感心しました。

サン・セバスチャンではコンサートに出演する合唱団員の家にステイする子がほとんどでした。1日目はそれぞれ試練の夜だったようですが、時間がたつにつれ、子供たち同士の繋がりの中、安心できる場所を構築している、と感じました。また、私のつたない英語で話したステイ先の保護者の皆さんは、沢山の愛情をもって、子供たちに接して下さっていることが伝わりました。  

サン・セバスチャンは雨。濡れた靴のまま、コンサートもしました。国際青少年音楽祭当日も雨。会場は高い天井、美しい装飾、日本では考えられないほど響きのあるサンタ・マリア教会、沢山のお客様、曲が終わるたびに起こる拍手に感激しました。

演奏会後は、レセプション。その中で、想像もしてなかった出来事が起こりました。子供たちがどんどん自由に歌い始める、事前に練習してない曲まで歌う、笑顔で自由に歌う、他の合唱団に中に入って歌う…日本では考えられなかった子供たちの姿に驚きとともに、喜びを感じました。古木さんのおっしゃっていた交流ってこのことか!そして、子供の成長ってこういうことか!

その場所に行って、その場所の文化を知り、そこに住む人たちと心を通わせる、自らそれを体験することによって、自らの将来に役立てる。遠征の本当の意図を知りました。きっと子供たちはこの経験を心に焼き付けるだろう…その状況を目の当たりにし、ここに連れてくるまでのことを思い出し、私自身の達成感で胸がいっぱいになりました。

この遠征は、私にとって貴重で大切な時間でした。今回のことがなければ、知らなかった経験と出会いの連続でした。このような大切な場所まで導いてくださった、EUジャパンフェスト日本委員会の皆さん、欧州文化首都のスタッフの皆さん、宮城三女OG合唱団の遣水さん、ありがとうございました。そして、この経験をさせてくれたリトルフェニックスの子供たちに、見守ってくださった家族の皆さん、原先生に、感謝しています。

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