欧州文化首都(European Capitals of Culture)について
1985年に開始され、30年以上にわたり続く「欧州文化首都(European Capitals of Culture)」は欧州連合(EU)における最もよく知られた文化事業の1つです。
欧州文化首都の制度は1985年にギリシャの文化大臣メリナ・メルクーリ(当時)による「真のヨーロッパ統合には、お互いのアイデンティティーとも言うべき、文化の相互理解が不可欠である。」という主張がきっかけとなり[1]、「ヨーロッパの各都市や地域が持つ特色ある文化を人々が共に祝福する」という目的を以て開始されました[2]。同年のアテネ(ギリシャ)における開催を皮切りに、欧州文化首都は、現在では日本をはじめ世界100か国以上のアーティストが参加するグローバルな取り組みに発展しました。開催都市では1年を通して多様な文化芸術プログラムが展開されています。
©Rijeka2020
欧州文化首都の開催が都市にもたらすレガシーとしては、以下のものが挙げられています。
(以下[3]より引用)
- 都市の再生
- 都市の国際的な知名度の上昇
- 地域住民自身による都市に対するイメージの向上
- 都市の文化に新たな命が吹き込まれる
- 観光産業の活性化
©Galway2020
欧州文化首都開催国と開催都市決定までのプロセス
欧州文化首都の開催国は、欧州委員会により2033年まで決定されています[4]。
開催都市の決定にあたっては、まず各開催国内で立候補都市の募集が行われます[5]。その後数年の期間をかけ、各都市の立候補趣意書(Bid Book)をもとに独立した専門家による選考が重ねられ、5年前に開催都市が決定されます[6]。各立候補都市は開催権獲得に向け、地域の住民、文化・経済・地域社会関係者とともに様々な準備活動を展開します。
また、欧州連合(EU)の拡大に伴い欧州委員会の予算も飛躍的に増え、欧州文化首都開催に伴う文化や交通などのインフラ整備に対するEUからの予算分配も期待できることから、近年は立候補する都市も増加しています。
現在は毎年2都市での開催となっていますが、2021年からは、EU加盟候補国から欧州文化首都への参加枠が2022年(オリジナルのタイトルイヤーは2021年)、2024年、2028年、2030年、2033年に設けられ、3都市で開催されることとなりました[5]。これにより2021年はノヴィ・サド(セルビア)、2024年にはボーダ(ノルウェー)での開催が決定しています。
©Novi Sad 2021
EU・ジャパンフェスト日本委員会の発足と欧州文化首都との協働
1990年代に入り、デジタル化とグローバル化が一気に進み、世界中が芸術文化を共有する時代が出現しました。
1993年のアントワープ(ベルギー)における欧州文化首都開催に際し、ベルギー政府より協力要請が寄せられたことが契機となり、経済界、欧州各国駐日大使の有志により当委員会が設立されました。同年6月にはアントワープにおいて「第1回EC・ジャパンフェスト」を開催。以来、当委員会は「活動の基本方針」をもとに、毎年の欧州文化首都において日欧が協力して実施するプログラムに対する支援を行っています。
1993年以来、31か国の51の欧州文化首都における文化芸術活動を支援し*、「地域社会への貢献」や「社会的責任」に関わる市民やアーティストの国境を越えた活動を後押しすることで、健全なグローバル社会の構築に寄与することを目的としています。
*既に開催が決定している2021~2025年の欧州文化首都への支援も含む
欧州文化首都開催国・開催都市一覧
2026年以降は、欧州文化首都開催国のみ決定。順次、開催都市が各国候補地から選定されます。
(2021年1月14日現在)
地図上のピンをクリックすると説明が表示されます。
ピンの色:赤/当該年度の開催都市、青/将来の開催都市(2024年まで)、緑/過去の開催都市
年次 | 開催国・都市一覧 |
---|---|
2027年 |
ラトビア・リエパーヤ / ポルトガル:エヴォラ(第35回EU・ジャパンフェスト開催) |
2026年 |
フィンランド・オウル/スロヴァキア・トレンチーン(第34回EU・ジャパンフェスト開催) |
2025年 |
ドイツ・ケムニッツ / スロヴェニア・ノヴァ・ゴリツァ・ゴリツィア(第33回EU・ジャパンフェスト開催) |
2024年 | エストニア・タルトゥ / オーストリア・ザルツカンマーグート / ノルウェー・ボードー (第32回EU・ジャパンフェスト開催) |
2023年 |
ハンガリー・ヴェスプレーム・バラトン |
2022年 | リトアニア ・カウナス/ ルクセンブルグ・エッシュ (第30回EU・ジャパンフェスト開催) |
2021年 |
ルーマニア・ティミショアラ / ギリシャ・エレフシナ/セルビア・ノヴィサド |
2020年 |
クロアチア・リエカ / アイルランド・ゴールウェイ |
2019年 | イタリア・マテーラ / ブルガリア・プロヴディフ (第27回EU・ジャパンフェスト開催) |
2018年 | オランダ・レーワルデン / マルタ・ヴァレッタ (第26回EU・ジャパンフェスト開催) |
2017年 | デンマーク・オーフス / キプロス・パフォス (第25回EU・ジャパンフェスト開催) |
2016年 | スペイン・サンセバスティアン / ポーランド・ヴロツワフ (第24回EU・ジャパンフェスト開催) |
2015年 | ベルギー・モンス / チェコ・プルゼニ (第23回EU・ジャパンフェスト開催) |
2014年 | スウェーデン・ウメオ / ラトビア・リガ (第22回EU・ジャパンフェスト開催) |
2013年 | フランス・マルセイユ-プロヴァンス / スロヴァキア・コシツェ (第21回EU・ジャパンフェスト開催) |
2012年 | ポルトガル・ギマランエス / スロヴェニア・マリボル (第20回EU・ジャパンフェスト開催) |
2011年 | フィンランド・トゥルク / エストニア・タリン (第19回EU・ジャパンフェスト開催) |
2010年 | ハンガリー・ペーチ / トルコ・イスタンブール / ドイツ・ルール (第18回EU・ジャパンフェスト開催) |
2009年 | オーストリア・リンツ / リトアニア・ヴィリニュス (第17回EU・ジャパンフェスト開催) |
2008年 | イギリス・リバプール / ノルウェー・スタバンガー (第16回EU・ジャパンフェスト開催) |
2007年 | ルクセンブルグ・ルクセンブルグ / ルーマニア・シビウ (第15回EU・ジャパンフェスト開催) |
2006年 | ギリシャ・パトラス (第14回EU・ジャパンフェスト開催) |
2005年 | アイルランド・コーク (第13回EU・ジャパンフェスト開催) |
2004年 | フランス・リール / イタリア・ジェノバ (第12回EU・ジャパンフェスト開催) |
2003年 | オーストリア・グラーツ (第11回EU・ジャパンフェスト開催) |
2002年 | スペイン・サラマンカ / ベルギー・ブルージュ (第10回EU・ジャパンフェスト開催) |
2001年 | オランダ・ロッテルダム / ポルトガル・ポルト (第9回EU・ジャパンフェスト開催) |
2000年 | ベルギー・ブラッセル / フランス・アビニョン / スペイン・サンチャゴ・デ・コンポステラ (第8回EU・ジャパンフェスト開催) イタリア・ボローニャ / ノルウェー・ベルゲン / ポーランド・クラクフ / フィンランド・ヘルシンキ / アイスランド・レイキャビク / チェコ・プラハ |
1999年 | ドイツ・ワイマール (第7回EU・ジャパンフェスト開催) |
1998年 | スウェーデン・ストックホルム (第6回EU・ジャパンフェスト開催) |
1997年 | ギリシャ・テッサロニキ (第5回EU・ジャパンフェスト開催) |
1996年 | デンマーク・コペンハーゲン (第4回EU・ジャパンフェスト開催) |
1995年 | ルクセンブルグ (第3回EU・ジャパンフェスト開催) |
1994年 | ポルトガル・リスボン (第2回EU・ジャパンフェスト開催) |
1993年 | ベルギー・アントワープ (第1回EU・ジャパンフェスト開催) |
1992年 | スペイン・マドリッド |
1991年 | アイルランド・ダブリン |
1990年 | イギリス・グラスゴー |
1989年 | フランス・パリ |
1988年 | ドイツ・ベルリン |
1987年 | オランダ・アムステルダム |
1986年 | イタリア・フィレンツェ |
1985年 | ギリシャ・アテネ |
2027~2033年の開催国
2028年:チェコ / フランス/ 第三国
2029年:ポーランド / スウェーデン
2030年:キプロス / ベルギー/ 第三国
2031年:マルタ / スペイン
2032年:ブルガリア / デンマーク
2033年:オランダ / イタリア/ 第三国
参考資料
[1] European Communities, 2009. European Capitals of Culture: the road to success – From 1985 to 2010.
https://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/sites/creative-europe/files/library/capitals-culture-25-years_en.pdf
[2] Official Journal of the European Communities, 1999. DECISION 1419/1999/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 25 May 1999 – establishing a Community action for the European Capital of Culture event for the years 2005 to 2019.
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:31999D1419&from=EN
[3] Creative Europe, 2020. European Capitals of Culture.
https://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/actions/capitals-culture_en
[4] Decision No 445/2014/EU of the European Parliament and of the Council of 16 April 2014 establishing a Union action for the European Capitals of Culture for the years 2020 to 2033 and repealing Decision No 1622/2006/EC
OJ L 132, 3.5.2014, p. 1–12 (BG, ES, CS, DA, DE, ET, EL, EN, FR, HR, IT, LV, LT, HU, MT, NL, PL, PT, RO, SK, SL, FI, SV).
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32014D0445&from=EN
[5] Designated European Capitals of Culture
https://culture.ec.europa.eu/policies/culture-in-cities-and-regions/designated-capitals-of-culture
[6] European Commission, n.d. European Capitals of Culture 2020 to 2033 – A guide for cities preparing to bid.
https://ec.europa.eu/programmes/creative-europe/sites/creative-europe/files/capitals-culture-candidates-guide_en.pdf