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[Vol.132] ワン・ダンス・ウィーク2019で盛況を博した日本の新しい芸術、声、絆

ツヴェタナ・ゲオルギエヴァ

ワン・ダンス・ウィーク、国際パートナーシップ担当

ブルガリア市民は、日本文化の魅力に取りつかれています。心奪われる感動が、プロヴディフで開かれた第12回ワン・ダンス・ウィーク・フェスティバルの一環である「フォーカス・ジャパン」プロジェクトで再認識されました。欧州文化首都の名を冠する年となった2019年に、私達は日本有数の最も優れたダンスの奇才を披露する運びとなりました。多彩な技法やテーマを展開する二つのプロジェクトをご紹介するに際して、様々なジャンルや芸術形態に興味のある方々をはじめ、若者、ダンス専門家、さらには外国人旅行者からの関心を集めるに至りました。日本人パフォーマーによるこれらの舞台が、今日の日本の創造表現に対する人々の理解の増進に繋がったのです。

 

当フェスティバルにおいて最大かつ最も野心的な今回の「フォーカス・ジャパン」では、二組のアーティスト集団とその舞台である、伊藤郁女氏の『私は言葉を信じないので踊る』と、バイオリニストのビリアナ・ヴッチコヴァ氏、マルチメディアデザイナーのハンス・ペーター・クーン氏、パフォーマーの和田淳子氏と長尾明実氏による世界初公開作品『ゴールデン・ディルージョン』を披露いたしました。コンテンポラリーダンスが異なるジャンル、文化、出身国を背景に持つ面々を一堂に集め、そのステージが合流地点さらに交流の場に様変わりしたことが、芸術の最大の目標とはそれがコミュニケーションと理解のツールとなることである、という認識を再び新たにしました。

両公演ともに、人々の高い関心を集めました。伊藤郁女氏の『私は言葉を信じないので踊る』公演は、9月28日にプロヴディフ・ドラマ・シアターで開催され、136の座席が満杯となりました。プロヴディフの古代ローマ劇場で開かれた山本能楽堂の能公演を含む他の強力な競合イベントの存在をよそに、公演2週間前には完売となりました。観客は、長年の物理的、情緒的隔たりを経て、娘が父親を舞台へと招き、個人的で率直な吐露を表現した作品を体験しました。親を失うことへの恐れ、やがて来たる死の受容、家族への郷愁、家父長的関係、移民生活などのテーマに触れ、観客は深く心を揺さぶられ、拍手喝采を送りながら涙を隠す術もありませんでした。

 

作品『私は言葉を信じないので踊る』のなかで、伊藤郁女・博史両氏は、伝統的な日本人の家族関係について考察していますが、これは多くのブルガリア人が自分達自身に投影できる内容でもありました。父娘による微妙なダンスは、異なる世代とジャンルを背景とする芸術家同士の邂逅ともいえます。ダンスが放つ動の美と博史氏作の彫刻が漂わせる静のインパクトが舞台上で出合います。郁女氏は、平凡な事柄から、存在、信条、権威といった本質的テーマに至るまで、これまで長らく先延ばしにしてきた数多の問いを父親に投げかけます。作品の全体的な理解と鑑賞をより深めて頂けるよう、ブルガリア語の字幕が表示されました。繊細で微妙で関係を捉えたこのパフォーマンスは、観客を心ゆくまで満喫させました。人々はこの芝居を身近に感じ、ストーリー展開を自分達と結びつけて考えることができました。ブルガリアでは、移民や世代間格差、あるいは文化的影響が原因で、多数の家族が離散しているという現状があるためです。

 

『ゴールデン・ディルージョン』で観客は、電子音と生音、照明デザイン、生演奏の音楽とパフォーマンスが織り成す融合を体験しました。有名なドイツ人アーティストのハンス・ペーター・クーン氏は、黄色いカーペットに24個のランプと24個のスピーカーを配した美しい音と光のインスタレーション作品を制作しました。日本人パフォーマー和田淳子氏と長尾明実氏は、ブルガリアの即興バイオリニストのビリアナ・ヴッチコヴァ氏と舞台共演しました。こうして、これらのアーティスト達が抽象の世界を共創し、観客に様々なトピックについて考えてみるよう促したのです。本作品のワールドプレミア公演は、10月11日と12日に、プロヴディフ2019本部が拠点を置くオルタナティヴ・スペース、スクラッドで開催されました。

産業用のタバコ倉庫から目を見張るような現代的な展示スペースへと、クーン氏の妙技により、4階建ての建物が見違えるほどに変貌を遂げました。当プロジェクトの準備にはボランティア達が参加し、この領域横断型チームと協働するチャンスを手にしました。インフォーマルな学習プロセスを通じて、ボランティアの皆さんは将来に向けて新たなスキルを磨きました。

 

「フォーカス・ジャパン」の公演は、マスコミで広く報道されました。これらはオンライン版を含む100近い出版媒体に掲載され、テレビやラジオではアーティストのインタビューが放送されました。『私は言葉を信じないので踊る』の広報活動は、4月に開始しました。その発表に続いて、雑誌の印刷広告ページやインターネット上でのバナー広告キャンペーン、さらに定期的なソーシャルメディアのスポンサード投稿キャンペーンへと展開を進めました。『ゴールデン・ディルージョン』の公演もまた、メディアに好評でした。アーティスト総勢で、ブルガリア国営テレビへの出演を果たしました。当イベント専用のフェイスブックのイベントページが作成されたほか、ビリアナ・ヴッチコヴァ氏は人気ニュースサイト、ドネヴニク(Dnevnik.bg)とヴェスティ(Vesti.bg)、そしてラジオ・カトラFMでもインタビューを受けました。

 

15,000部のパンフレット、500部の冊子、15,000枚のレストラン用テーブルマット、5,000部の「ヴィズ!」誌の小冊子、60枚のポスター、バナースタンド3本、幹線道路沿いのビルボード広告10ヵ所、ブランド予告編動画1本、全公演前に流れる公式アナウンスにEU・ジャパンフェスト日本委員会のロゴが含まれました。 

 

ワン・ダンス・ウィークでは、プロヴディフ滞在中の招聘アーティストに対し、最高のおもてなしを尽くすよう常に努めています。郁女氏は赤ちゃんと一緒に到着し、その後ご両親が合流し、待望の家族の再会を果たしました。伊藤家はフェスティバルのチームメンバーとボランティアとともに街散策や観光をしながら楽しいひとときを過ごしました。博史氏の指示のもとで彫刻の設置に取り組めたことは、ボランティアならびにチームにとって、この著名日本人芸術家とその作品のごく一部について窺い知る素晴らしい機会となりました。『ゴールデン・ディルージョン』には、10名を超えるボランティアが、照明と音響の設営に加え、黄色のカーペットの設置作業を手伝いました。設営の完成には丸5日間かかりましたが、その間を通じて新たな友情が芽生えました。

交流や文化的対話に関して言えば、私達は献身的な日本人ボランティアと楽しく協働することができました。松村有実さんは、当フェスティバルにかけがえのない支援をもたらし、またプロヴディフ滞在中に新しい友達と出会えた様子でした。彼女は様々な制作活動、裏方作業、印刷物配布、アーティストの案内役や補佐などに加わりました。有実さんには、ボランティアとして、上演プロセスや、魔法を生み出す舞台裏の制作現場を見学していただきました。

 

「フォーカス・ジャパン」は、EU・ジャパンフェスト日本委員会からのご支援を頂き、ブルガリアにおいて現代日本文化を披露する一端を成し遂げることができました。観客や参加者とのくだけた会話のなかから、当プロジェクトの持続可能性に向けた手応えが得られました。地元市民が、より多くの今日の日本の現代ダンスアーティストを観て知ることに対して、オープンかつ熱心であることが確かめられたのです。

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