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[Vol.108] クラウドファンディングへの挑戦!(インタビュー)

坂光敏

アーティスト

“借り入れなど、基本的には自分の力でお金を作りたいという気持ちはあったのですけれども、一度やってみたら面白いかもしれないと思い、クラウドファンディングを決意しました。”

2016年1月~2月にポーランド・ヴロツワフでの展覧会「国際コンテンポラリー・ドローイング・フェスティバル」に参加しました。最初に参加へのお話をいただいたのは、2014年11月頃、フェスティバル主催者のダニエラとプシャメックが来日した際でした。招聘が決まった後、アーティスト個人も助成金への申請をするようお願いをされましたので、その時に頂いた資料を参考にして、国際交流基金へ申請書を提出しました。しかし、残念ながら申請は通らず、また2015年の8月頃にはダニエラたちが組織として申請しているポーランド側の助成も厳しいというお知らせがありました。どうしたらよいものかと思い悩んでいた頃に、友人の中川研氏がクラウドファンディングの話を持ち掛けてくれました。彼は、KEN&COMPANYという会社を一緒に運営している仲間で、海外展への参加に共感してくれました。クラウドファンディング(以下CFと略記)に関して、はじめは前向きではなかったのですが、現実的にはお金がないとやっていけない。それに、やってみたら意外と面白い経験かもしれないと思い、挑戦することにしました。

“Campfireでのキャンペーンの内容を、自身がメンバーである現代美術のNPOのアート・トレイスのホームページにも掲載し、紹介の場を拡げました。”

今回のプロジェクトは、招待による海外での展示、しかも、僕たちがあまり聞きなれない街の名前(ヴロツワフ)が、CF活動を知った人の興味をそそるといった点もありましたので、活動報告の更新を随時行い、なるべく密にFacebookに投稿するなどを心がけました。また、SNSの他には、個人的に繋がりのある友人・知人にも協力を求めました。メルマガやTwitter、個別にメールするなど、考えうるあらゆる手段を駆使して、この活動を知ってもらうことに心を砕きました。
また、Campfireでのキャンペーンの内容を、自身がメンバーである現代美術のNPOのアート・トレイスのホームページにも掲載し、紹介の場を拡げました。CFサイトの登録が少し面倒だなという方も中にはいるし、手数料を取られないようにと気遣って、直接振り込んでくれた方々もいました。さらに、展覧会に参加している最中にも、KEN&COMPANYのサイト内で二回目のクラウドファンディングを行い、Campfireでの支援金とは別に約15万円を集めることができました。運営サイトだけではなく様々な方法を組み合わせることで60人以上の方々にご支援をいただくことができ、最終的に集まったのは56万2,000円。こうして得られた資金は、展覧会にかかる諸経費として活用させていただきました。

アートトレイスというNPOは、もともと武蔵野美術大学の友人や助手が立ち上げた組織で、自分も学生の時にメンバーに加わりました。現代美術関連の書籍出版の他、セミナーやトークイベントの開催、アーティストランでのギャラリーの設立などの活動を行っています。アートトレイス・ギャラリーは、高く、狭く、期間が短いといった日本の展示場には付き物の難点を改善したいという思いで、東京・両国にて2004年にスタートしました。自分の作品を公表したい人を募って二年ごとにメンバーを入れ替え、有志による共同所有という形で運営しています。ギャラリーにはすべてを取り仕切るオーガナイザーにあたる人がおらず、全員が平等な立場で運営に関わります。会計、HP作成、広報、企画…といった具合に、各自が班に属して何らかの役割を担い、メールやクラウドサービスを利用してお互いに連絡や情報共有を行っています。

クラウドファンディングのメリット、デメリット

資金調達と活動の宣伝が兼ねられる。自分だけでは短期的に集められない額を集められる。金額的な理由で断念するプロジェクトに挑戦できる。その時に必要なお金が懐に入る…といったことです。CFサイトにはオフィシャルなイメージがあるので、出資する側には安心感があるかと思います。アーティスト側としても、サイトを通じてだと依頼しやすいという面もあります。
ただし、クラウドファンディングには、支援してくれた人へのお返し、所謂「リターン制度」があります。その経費や手間をきちんと計算しないと本末転倒になりかねないので、ここは注意しなければいけない点でもあります。CFが成立し、無事に作品展示が実現した後にも、支援者への連絡、梱包、発送作業など、やることは結構たくさんあります。なるべく自分にとって負荷の低い仕方、資金の受け取りとプロジェクトの実行までのスケジュールをシュミレーションすることも、本来の目的である質の高いパフォーマンスを行う上では大事なことだと思います。

“スポンサーを一切取らず、個展を開いて、作品を売るというだけですべてのお金を作り出す――本当はそれが個人的には一番いいと思うのですけれど、お金がないという理由でプロジェクトを不成立してしまうという結果は一番避けたい。”

個人的にはすべて自力で資金調達するのがベストと考えています。例えばクリストという作家は、作品のプランを描いたドローイングを販売し、その売上だけで作品にかかる費用を全て捻出していますよね。とは言っても、自己出資にこだわるあまりに、自分が行いたい展示やプロジェクトを断念せざるを得ないという結果は最も避けたいところです。まずは、皆さんに作品を見ていただく機会を実現するということが一番大事ですので、金銭的な理由が障害になっているプロジェクトを実現させるための手段の一つとしては、クラウドファンディングは有効だと考えています。
ただし、CFを利用しているアーティストや団体は、自分の周りにはほとんどいません。サイト運営側の手数料がもっと少なくなればいいなと感じましたが、Campfireに限って言えば、現在はその手数料も下がりましたし、目標額に達しなくても受取金額がゼロにはなることはありません。使用者にとってリスクがなくなり、以前よりもずっと挑戦しやすくなったのではないでしょうか[1]

“たくさんの人を巻き込んでいくプロジェクトという意味では、CFは非常に効果があるのではないかと思います。”

皆さんにお伝えしたいことは、「人の数が集まるとできることはある」ということです。先程もお話ししたように、アートトレイス・ギャラリーの運営にはアーティスト自身が関わっています。いろいろな人が集まりチームになることで、それぞれに得意な分野や多くのスキルが集まりますし、ギャラリー運営にかかるお金のハードルも下がります。CFもそれに似ていて、一人で100万円集めるのはとても大変ですが、一人一万円といった形でみんなから手伝ってもらうことができれば、プロジェクトの実現度は高くなります。それに、仲間がいれば、情報交換や励まし合うこともできる。たくさんの人を巻き込んでいくプロジェクトという意味では、CFは非常に効果があるのではないかと思います。ですから、もし自分の活動に大きな資金が必要な場合には有効に利用してほしいですね。いまはノーリスクで失うものはないと思うので、とりあえずやってみてください!

[1] CampfireではCFを開始する際に「All-or-Nothing」「All-In」の二つのパターンを選択できる。「All-or-Nothing」では募集期間内に目標金額を達成した場合”のみ”、「All-In」では目標金額の達成・未達成に関わらず、支援総額の8%が手数料(決済手数料は除く)となります。ただし、「All-or-Nothing」で募集期間内に目標金額を達成できなかった場合(不成立)は、集まった支援金はパトロンに全額返金されます(不成立の場合は手数料は一切かかりません)。
※このインタビューは2017年3月にEU・ジャパンフェスト日本委員会事務局にて実施されました。

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