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[Vol.26] 輝く過去との再会

鹿児島市立美術館における写真展「日本に向けられたヨーロッパ人の眼・ジャパントゥデイvol.9」(会期:2008年4月8日~20日)の関連事業として、南日本新聞社との共催により、「エッセイ・作文コンテスト『一枚の写真を見て感じたこと』」を開催。6歳から78歳まで、215編の応募がありました。その中から、最優秀賞作品3編をご紹介します。

斉藤 友美さん

鹿児島市 会社員 28歳 ※肩書は当時

ふわっと過去に引き戻される感覚。

強烈な引力に思わず魅入ってしまった。

朝方。真昼。夕暮れ。どの時間帯だといわれてもすんなり受け入れてしまいそうな、そういった時間からは切り離されたような、ただ、過去。

たしかに現代を撮っているはずなのに、なんなんだろう、この懐古感は。

一瞬遅れて、校庭に子供たちが現れる。賑やかな声をあげて遊びはじめる。手前の鉄棒にも、ほら。気付けば小さい自分もその中に加わって― ―

そこまで想像して我に返った。

(なにこの写真、ちょっと、すごい!)

能動的に動くものは何ひとつ入っていない一枚。けれども不思議と寂しさはなく、焦がれるような懐かしさに浸らせてくれる。

色かな、と思う。とても好きだ。セピアより明るめで黄が強く、金色に枯ちかけた銀杏の葉か、古代の秘宝を詰めた宝箱のような色。

『終わりの時』を感じさせながらも鮮やかに輝く。校舎の上にかかる雲も滲むように光っているから輝きはいよいよリアルで、動きが生まれてくる。空気の温度、匂い。風が吹いたら砂が舞う校庭の土。見慣れたソテツはその存在だけでもう、ああ、鹿児島だなって思ってしまう。

じんわりと胸にくる、愛しくて大事なものを凝縮した空間。写真は撮り手の心が反映される。好きだな綺麗だなと思って撮った写真は素敵で、そうでない場合と では全く違う。ということは、私が感じた親しみや愛着を、ニク・イルフォヴァーヌ氏自身が感じているのだろう。本当に初めての来鹿ですかと問いたくさえ なってくる。

『出会い』ではなく『再会』。この写真との邂逅は、その言葉がしっくりくる。

大事にしていた過去との、大好きだった場所との、しばらく忘れていた思いとの。

素敵な再会を、ありがとうございます。

 

vol_26_17_02

撮影:ニク・イルフォヴァーヌ

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