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欧州文化首都における日本関連プログラムを支援しています

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[Vol.10] コークでの写真選考会-日欧アーティスト・学芸員交流プログラム報告

写真プロジェクト「日本に向けられたヨーロッパ人の眼/ジャパントゥデイ vol.7」作品選考会の前後を利用し、3名の学芸員が欧州の芸術機関を視察しました。参加学芸員からのレポートです。

石井 太

神奈川県民ギャラリー 学芸員

アイルランド・コーク市は、2005年の欧州文化首都であり、年間を通して多数のイベントがコーク市とその周辺で開催さ れる。コークの中心街、セント・パトリック通りを歩くと、店先に「Cork 2005 European Capital of Culture」のロゴマークが至る所に見え、街をあげてのイベント開催への熱気が伝わってくる。大きなショーウィンドウに子どもの写真がたくさん吊りさ がっているのが気になったので、立ちどまって中をのぞくと、くったくなく笑っている子どもたちの写真に加えて、それぞれの願い事が書かれたメッセージカー ドがある。日本の七夕祭りに短冊に願い事を書いて笹に飾りつけるのと似ている。街なかに自然にとけこんでいて、とても素敵なイベントであった。

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コークの夢/Cork’s Dream

セント・パトリック通りからグランドパレードへ向かい、ワシントン通りの南側の狭い路地に面してトリスケルアートがあ る。「エミグランス(移住)」というタイトルの写真展が開催されており、ベリンダ・カーク氏に会場を案内してもらった。最後に受付に展示してあったジャ ニーヌ・アントニーのブロンズ彫刻<ベールを取る>は、イスラム教徒の女性の被るベールの形をした鐘で、鳴らしてみると非常に心地よい音がトリスケルの会 場に響き渡った。

コークでの写真選考会は2月4日、午後1時から5時までコーク大学にあるルイス・グルックスマン・ギャラリーの一室で行われた。

選考は、デイヴィッド・ファレル氏の写真から始まった。紅葉した山の写真が目を引くが、これといってキレのある写真はない。写すモノが絞り切れていな い。その中で高校生のポートレートが群を抜いて面白い。アイルランド・ダブリンから来たデイヴィッドと岩手県の高校生との出会い、そのわくわくどきどきし た高揚といったものが写真からストレートに伝わってくる。さらに関心をひいたのは、高校生の彼、彼女たちのはいているスニーカーが一つ一つみんな違ってい て、それがまたべつの顔、表情をかもしだしているのだ。ポートレートがお家芸のヴァレンティーナはこの写真が大のお気に入りであった。写真プロジェクトの 企画者であり写真の最終選考にあたる菊田氏にとって、デイヴィッドのこの写真は予想を超えたものらしく、とまどいを隠し切れないようであった。

次は、ヴァレンティーナ・サイデル氏の写真。彼女は、独特のポートレートを発表している。

写真家の側から一方的に撮影するといった方法ではなくて、写される側の被写体と写す側の写真家との間で「あなたはどんなふうに撮られたい?」と話し合い を進め、服装や撮影場所を決めて写真をとるというやり方である。神奈川県の撮影では、横浜市綱島の薬局前に立つ若い写真家のペア、赤レンガ倉庫を背景にし たキュレーターの写真などがあった。

ヴァレンティーナは印画紙に焼き上げた美しい写真をいつくしむように机上に並べ、参加者の意見を待っている。ディレクターの菊田氏は、写真を食い入るよ うに見つめていくと、河原に憩う人物写真の取捨選択をめぐり、ヴァレンティーナと菊田氏で緊迫したやり取りがかわされたが、最終的に規定の一人20点まで 絞り込まれた。

最後は、ダラ・マクグラス氏の写真である。彼は、スタジオカメラを三脚に固定しスローシャッターで撮影する。ダラの写真は、フレーミングに全く破綻を感 じさせるところがなく完成度が優れている。神奈川県下をバイクで走りまわって撮影場所を決めた。彼の手にかかると、見慣れたはずの風景が全く別の顔を見せ る不思議な写真であった。

この後、セント・フィンバレー教会近くのレストランで食事、ついでパブに入りコーク産の黒ビール、マーフィーズ、ビーミッシュを飲みかわし、コークでの写真選考会の一日が終わった。

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