TOPページ
活動の基本方針
更新情報
プログラム
コラム
委員会概要
欧州文化首都
ご協力者
関連記事集
出版物のご案内
リンク
開催案内
その後の活躍・・・
TOPページ
>>
プログラム
>>
第11回 EU・ジャパンフェスト
>>
ソロ・ダンス・パフォーマー 喜多尾浩代公演
喜多尾 浩代
2003年は、EU・ジャパンフェストからの助成を受けて、招待を受けていた多くのフェスティバルに参加することができ、各所で身体性と独自の身体表現の提示方法に対して高い評価を得た。そこで、全ての公演を振り返って、各々の地における反響を簡単にまとめてみることにした。2003年3月にキール(ドイツ)で開催された国際モノ・ドラマ・フェスティバル: THESPIS Festivalに参加した際、ディレクターからのDIPLOMAを受け、新聞に掲載された講評には『作品はテーマ性を重視したシンプルな内容でありながら、イマジネーションを掻き立てられる。また、表現する身体はまさに材料(マテリアル)そのものであり、刻々と変化する身体の変容は見事である。』と記されていた。このキールでの評価が、以下に続く公演ツアーを導いてくれたのである。
アルメニアでは演劇大学の学生や一般女性の支持を得て、公演の反響は本人でさえ驚く程のものであった。社会主義共和国から1991年に共和国独立宣言をして共和制政体を選んだが、価格の自由化や国営企業の民営化などの自由貿易国家への変遷の歴史はまだ浅く、新生トルコによる大虐殺や旧ソビエト連邦による抑圧の記憶も強く残るアルメニアは、一部では市場経済化や自由主義を支持しながらもどこか他国の影響をストレートに受け入れられない国民が、独自の歩みを期待しているかのように見えた。芸術を通しての国民の主張は、ある時期において政府のプロパガンダに美術が利用された記憶が鮮明なためか、自由な表現は現代美術界ではなく現代演劇界において発展して成立しているようであった。そんな中で、オリジナリティーある身体性と『アイデンティティに潜在する自己規制』というテーマは、オリエンタリズムやある種のカタルシスを越えた(代弁したとまでは言わなくとも共感をもたらす)多くの人の期待に応えるパフォーマンスであったように感じた。大学やメディアを通じて事前の紹介の効果もあり、公演の直後に学生達が大勢舞台袖や楽屋に駆け付けて劇場から出られない状況が生じ、翌日には演劇大学での特別講義を急遽実施する運びとなり、大学だけでなく町でも好意的反応とパフォーマンスの効果が広がっていることに驚き喜んだ。また、来年の同フェスティバルプロジェクトへの参加と、大学での特別講義の依頼を受けて帰国することになった。
モルドバにおいても、身体の変容能力と独自の身体表現に対する高い評価を得て、その結果は優秀賞の受賞に繋がり、観客の支持も受賞時の拍手の多さと暖かな喝采から感じ取ることができた。モルドバは、アルメニアと同じく旧ソビエト社会主義共和国から1991年に独立した共和制国家であるが、民主化と市場経済化路線を歩み、その進歩は目覚ましい。実際、2年前に訪問した時の印象とは違って町に活気があり、若者の表情は明るく安堵感が漂い、以前に比べてモノが豊富になり自由な空気を感じることができた。そんな中で、女性の社会進出に対する意識の高さを感じ取り、また芸術界においても女性の表現の面白さが注目視されているように感じた。フェスティバルにおいても(私を含めて)3人の女性アーティストの特別テレビ番組が制作されるプランが持ち上がり、放映に向けて作品の一部の撮影、そして多くのインタビューと対談風景の撮影が行われた。政体が安定せず、共産党党首による統治と民主党党首による統治を繰り返す変化の多い体制の中における芸術が、どのような位置付けがなされているかについての考察をするには至らなかったが、現代演劇を含め舞台芸術に対する国民の期待は国民の主張の代弁というところにはなく、娯楽性を期待する傾向があり、どちらかと言うとエンターテイメント性の高い作品に若者の支持があるように感じた。
ブルキナファソにおける反応は、テーマに対する共感ではなく、もっぱら身体性にあったようにも思われるが、リズムに先導されない身体表現の存在は、アフリカの人達に対してある種の驚きを与えたようであった。しかし、そのこと以上に、フェスティバルに参加しているヨーロッパ諸国のアーティストからの強い支持(身体性やオリジナリティーに対する評価に加え、テーマに対する理解と作品への発展性への評価)を得たことが嬉しく心に残った。
なお、アヴィニヨンFESTIVAL OFFでの10日間連続単独公演はフェスティバルに対する技術者サイドのストライキにより観客動員に困難が生じ、観客に好印象を与えたものの反響を明確に捉えるに至らなかったことが残念ではあった。が、しかしEU・ジャパンフェストからの助成を受けてアヴィニヨン・フェスティバルに公式参加して得た体験は、今後の創作活動や作品発表の発展を支えるものと考える。文末ではあるが、心からの感謝の気持ちをレポートに付記したいと思う。御支援御協力いただき、有難うございました。
<きたお・ひろよ/Esqui:nouver>
ページ先頭へ