自然のものと人工のものを比較するのはヨーロッパの文化圏ではよく目にすることだが、そうではなく近藤氏はその逆を試みた。存在するもの(自然)とそこへ足される建築との境界線を排除しようとしたのである。建築家はしばしば、存在する木々に合わせて建物を形作るが、近藤氏は自身も述べているように、そこからさらに先を行き、自然と建築全体の優雅さを実現したかったのである。彼にとってこれは、そのインスタレーションを実験的にする側面だった。「森の形を変えることはできないが、森の中の様々な要素はこの条件の中でひとつの統一体となることができると私たちは考える。私たちがまだ知らない、森と建築と環境を体験できることを私は望んでいる。」と彼は書いている。
この作品は、作者がどのようにその場所を読み取り、その特徴と雰囲気を取り入れるかによって、その場所特定のものとなった。エストニアの人々は、森に対して強い精神的なつながりを持っていて、不思議なことに、私たちはみな子どもの頃、自分たちが空中に浮いているような感覚で歩ける木々の間を抜ける道を夢見たものだ。それ故に近藤氏は、極めてエストニア的な特徴を何とかつかみとり、彼のインスタレーションを訪れた人々から、想像できないほど温かい歓迎を受けた。
より広い規模で、LIFT11は公共空間での現代アートに対する先入観を壊し、街の景観や都市構造を使った広大な配列の場に注目を集めることを目的としていた。それが存在していた4週間、「A Path In The Forest」は多くのメディア取材を受けて30,000人以上の人々が訪れ、展示物が実に満足するものだったことを示す好意的な評価を得た。特に重要なのは、これはエストニアの人々が日本文化に特別な関心を持っているという事実によって助けられていたことである。そのようなインスタレーションをKadriorgに常設で置くことに賛成する記事もあった。
LIFT11の他の作品のように、「A Path In The Forest」は観客を普段は起こらないような場所に連れて行った。木々の中を地面から離れて歩き、公園と周りの環境を別の角度から見るという体験である。そのインスタレーションは秋には準備が整い、どのように自然が移り変わるか、どのように木々の色が変化するか、どのように葉が落ちていくかを感じるために人々は招かれた。この白い道を歩くことは、現代の日本の小説を読むようであった。私たちは、夢と覚醒の境界線を取り除く、明らかに身近な、かつ魅力的で不思議な雰囲気の、好奇心をそそる素晴らしい旅に呼ばれたのである。
Portrait by Maiken Staak
◎第19回EU・ジャパンフェスト:「都市空間インスタレーションフェスティバル「LIFT11」:建築家・近藤哲雄氏、ハヤシトモミ氏参加」プログラムページは コチラ