
| 選び、交わり、見る −日欧写真分野学芸員交流事業に参加して |
奥村泰彦 | ||||||||||
| ヨーロッパの写真家の眼を通して、日本の現在を紹介する展覧会「日本に向けられたヨーロッパ人の眼 ジャパントゥデイ」の第6回にあたり、仙台市、奈良県、和歌山県が撮影地として選ばれた。これに関連して、作品の選考会に参加し、写真に関連する美術館施設を中心に交流と視察の機会をいただいた。以下、簡単にその内容を報告したい。
2004年の欧州文化首都はフランスのリールとイタリアのジェノヴァである。選考会はリールで行われたのだが、日本を撮影した4人のうち、2人は都合がつかないとのこと。そのため、まず12月8日(月)、ジュネーヴにおいてマチュウ・ベルナール=レイモン氏の作品選考会が行われた。選考に当たったのは菊田樹子氏、小寺規古氏、清水有氏(せんだいメディアテーク学芸員)並びに筆者の4名。マチュウ氏の作品は、同一の場所を撮影した複数の光景をコンピュータに取り込み、対象を加えたり消したりすることによって、一見何の変哲もない画面に不自然さを漂わせるものである。瞬間の記録としての写真の特性を揺るがし、古典的な異時同図法による物語性を導入する手法とも見えた。相当数の作品を準備してくれており、それを20数点まで絞り込む作業は一筋縄ではいかないものであった。
続いてユギュ氏の作品である。彼は、既に20数点に作品数を絞り込んでおり、ノートパソコンで見ていった。あえて観光地としての奈良市に撮影を限り、奈良の観光地としての俗性と、宗教的、歴史的な面を同時に示す表現を目指したようである。先の2氏の作品はカラーであったが、ユギュ氏はモノクロで仕上げたいとのこと。念のため、彼が選ばなかった作品にも一通り目を通したが、やはり作家の選んだものが良いことを認めるにとどまった。 その他、リールの施設を視察する時間は無かったのだが、街中にも作品が設置されるなど、欧州文化首都事業の盛り上がりを確認できた。
4作家とも、選考にかけられる時間は十分とは言えなかったが、最終的な作品の点数や額装の方法と大きさについて、それぞれがアイディアを持っており、具体的な展示計画を立てるうえでの基本的な条件も明らかになった。
写真選考の合間を縫って、いくつかの美術館施設の視察を行うことができた。 2003年の欧州文化首都であるグラーツでは、その一環として設立されたクンストハウス・グラーツを訪れた。古い倉庫を大きく改装した建物に、カメラ・オーストリアの事務所と展覧会スペースが移り、それとは別にコレクションを持たない現代美術のための展覧会スペースが置かれている。カメラ・オーストリアは、事務所の引っ越しが終わっていない中で展覧会も開催しているというお忙しい中、ラインハルト・ブラウン氏にご対応いただいた。この施設ができたことでグラーツは、コレクションを持つノイエ・ガレリー(時間の都合で実見できたのはここだけだった)、アルテ・ガレリー等とあわせ、充実した博物館施設を持つ街になった。
ロッテルダムではオランダ国立写真美術館を訪れ、チーフ・キュレーターのフリッツ・ヒールストベルフ氏のご案内で、組織と施設を見学した。展覧会だけでなく、図書室、アルシーヴ、修復施設が揃い、それぞれに専任者がいるという、しっかりした組織の背景をうかがい知ることができた。その後、清水氏と筆者がフリッツ氏にそれぞれの館の説明を行った。 ロッテルダムでは他にボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館、ヴィッテ・デ・ヴィット現代美術センターを訪問した。
ナポリではミンモ氏並びに奥様のアンジェラ氏のご案内により、サント・エルモ城での「ガスパーレ・トラヴェルシ」展オープニングに出席した他、考古学博物館、カポディモンテ美術館などを視察した。この館の一角にはミンモ氏のコーナーがあり、イタリアでは辞書に載る作家であることを改めて実感した。 最後にフランクフルトを訪れ、国際写真フォーラム、ポルティクス、シルン・クンストハレ、市立ギャラリー、現代美術館、ギエルシュの家・地方美術館、リービークハウス・古代彫刻美術館、シュテーデル美術館、フランクフルト・クンストフェライン等を視察した。 ジュネーヴ、グラーツ、リール、ロッテルダム、ナポリ、フランクフルト(経由だけならブリュッセル、アムステルダム、ミュンヘン)と、多くの都市を駆け足で巡る旅であった。それぞれの都市で見ることのできなかった施設も多いが、全体を概観すると、コレクションを持たない非営利施設での展覧会活動が活発な印象を持った。同時に大規模な美術・博物館では、その収蔵品と基礎研究を土台に、実験的で挑発的、時に攻撃的とも言えるほど知的刺激に満ちた展覧会活動がなされていた。特にシュテーデル美術館の展示は興味深く、多いに参考になった。
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| (おくむら・やすひこ/和歌山県立近代美術館学芸員) |
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| 和歌山県立近代美術館 |
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| 640-8137 和歌山市吹上1-4-14 TEL:073-436-8690 |
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| 写真提供:菊田樹子・奥村泰彦 |
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